薬剤師の転職お役立ちコラム COLUMN

2023/02/09

AI時代の薬剤師の仕事は?AIを活用できる業務と必要スキルを解説

近年はAIの発達が進み、ニュースなどで人間の仕事が奪われる可能性が報じられることもあります。薬剤師として働いている方の中には、薬剤師の仕事の将来性を不安に感じている方もいるかもしれません。

当記事では、AIにできることや将来AIが担当しうる仕事とともに、薬剤師の将来性について解説します。今後も薬剤師として活躍し続けるためには、必要なスキルの移り変わりを把握しながら、薬剤師としてのスキルを磨き続けるようにしましょう。

1. AIにできることは?

AI(Artificial Intelligence)は、日本語では「人工知能」と翻訳されます。AIとは一般的に、人間と同様に物事を学習してさらに応用するなど、高度な知的作業を行えるコンピューターやソフトウェアのことを指します。ただし、正確な定義は企業や研究機関によりさまざまです。

AIにできるのは、おもに以下のような作業です。

  • ・音声や画像の認識
  • 音声を認識して文章に変換したり、画像から対象物を認識したりできます。音声認識機能は人間の声に反応して作動する「スマートスピーカ―」、画像認識機能はデジタルカメラの「顔認証システム」など、さまざまな場面で活用されています。
  • ・言語処理
  • 人間の使う言語の語句や文章構造を分析し、コミュニケーションや文章の翻訳、執筆を行います。過去のデータから文脈を判断することで、従来のコンピューターでは正しく理解できなかったあいまいな表現も、より高い精度で処理できます。
  • ・検索
  • 一定の条件下で最適な手段や結果を予測する機能です。過去のデータをもとに最適な手段を検索すると、将棋やチェスなどのゲームで、プロを負かすほどの結果を出すこともあります。
  • ・予測
  • 膨大な過去のデータをもとに、将来を予測・推論する機能です。経験や勘に頼らない推論やシミュレーションを行えるため、株価予測や商品の受発注予測などに活用されています。

1-1. AIの進化でなくなる仕事はある?

残念ながら、AIの進化とともになくなる仕事は存在します。オックスフォード大学と野村総合研究所は2015年に「10~20年後に日本の労働人口の約49%が人工知能やロボットなどで代替可能」という調査結果を公表しました。

出典:野村総合研究所「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に~601種の職業ごとに、コンピューター技術による代替確率を試算~」

AI化でなくなる可能性が高いのは、たとえば以下のような仕事です。

  • 一般事務員
  • 銀行員
  • 警備員
  • 工場作業員
  • スーパー・コンビニの店員
  • ホテルのフロント係など

特に、データ入力や受付処理などの定型業務はAIの得意分野で、代替される可能性が高いと言えます。

一方、人との密接なコミュニケーションや臨機応変な対応、0から1を生み出す作業などはAIの苦手分野です。医療従事者など人とのコミュニケーションが重視される仕事や、クリエイティブ能力が求められる仕事は、今後もAIに代替されない可能性が高いと考えられます。

2. 薬剤師の仕事はAIに奪われる?

薬剤師の代表的な業務内容は、以下の3つです。

  • ・調剤業務
  • 病院が発行する処方箋をもとに、薬を調剤する業務です。複数の処方薬を1つのパッケージにまとめたり散剤を混ぜたりする業務のほか、患者さんの希望によりジェネリック医薬品を処方する場合もあります。
  • ・服薬指導
  • 患者さんに対して、薬剤の効果や正しい飲み方、副作用、飲み合わせなどの説明を行います。単に指導するだけでなく、会話を通じて患者さんの生活習慣や食生活、不安などの情報をくみ取ることが大切です。
  • ・薬剤管理
  • 患者さんの服薬状況や残薬状況、併用薬・副作用の有無などの情報を記録・管理します。記録した情報は服薬指導業務に生かせるだけでなく、薬剤の在庫管理の面でも重要な役割を果たします。

薬剤師は、将来AIに取って代わられる仕事として名前が上がる機会が比較的多く、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。ここからは、上記のような薬剤師業務の中で、今後AIに代替されやすい仕事と代替されにくい仕事をそれぞれ見ていきましょう。

2-1. AIを活用できる薬剤師の仕事

薬局薬剤師の仕事のうち「調剤業務」や「薬剤管理」は、今後AI活用が進む可能性が高いと考えられます。データ処理や統計処理、データにもとづく定型作業などはAIの得意分野で、AIに任せることで業務効率化につながる可能性が高いためです。

たとえば調剤業務では、データ化された処方内容をもとに、自動で薬の調剤や分包ができるロボットなどが登場しており、すでに機械化が進みつつあります。データさえあれば、患者さん一人ひとりに合わせた微量な分量調整も自動で行うことが可能です。

さらに将来的には、分包した薬剤の種類や分量が正確かどうかをチェックする作業に、AIの画像認証機能が利用される可能性もあります。

また薬剤管理の場面でも、薬歴の音声入力やクラウドでの薬歴管理など、AI技術の導入が進むと考えられます。過去の膨大な調剤データを参照することで、疑義照会にもAIを活用可能です。

2-2. AIが苦手とする薬剤師の仕事

「服薬指導」をはじめとする患者さんとのコミュニケーションが必要な仕事は、今後もAIに代替されにくいと考えられます。「コミュニケーション」や「協調」「共感」などの対人業務は、AIが比較的苦手とする分野です。

たとえば、患者さんと密接にコミュニケーションを取ったり仲良くなったりして、会話の中から健康状態や生活習慣を把握することは、AIにはなかなかできません。患者さん一人ひとりに寄り添い、不安やニーズを把握する能力は、今後も薬剤師として活躍する上で重要視される可能性が高いです。

また、在宅医療を受ける患者さんの自宅を訪問して薬を処方したり服薬指導をしたりすることも、薬剤師の重要な仕事です。高齢化で在宅医療を受ける患者数が増加傾向にある中、薬剤師も在宅医療チームの一員として、医師や看護師などと協力しながら、地域医療に参加することが求められます。

3. AI時代に薬剤師が活躍するためには?

薬剤師の仕事の中には、調剤業務や薬剤管理などAIが得意とする業務がある一方、服薬指導のように人間にしかできないサービスも多くあります。

AI導入が進む時代に薬剤師として活躍するには、患者さんの健康状態やニーズをくみ取るためのコミュニケーションスキルを磨きましょう。細やかなコミュニケーションはAIの苦手とする分野であり、AI時代の薬剤師に特に期待される能力と言えます。

一人の患者さんを一人の薬剤師が担当する「かかりつけ薬剤師」になるのもおすすめです。「薬局勤務経験3年以上」「勤務先の薬局に週32時間以上勤務」など複数の要件を満たしてかかりつけ薬剤師になれば、活躍の場が広がる上、年収アップも期待できます。

出典:公益社団法人日本薬剤師会「かかりつけ薬剤師・薬局とは?」

また、「認定薬剤師」の資格や薬剤師と関連の深い専門スキルを取得して、今後活躍していきたい分野での専門性を高めるのも1つの手です。一定の要件を満たして「管理薬剤師」となり、調剤薬局の店舗運営やマネジメントに携わる方法もあります。

AI時代に薬剤師として活躍するには、人間にしかできない仕事を見極めた上で、キャリアプランに合わせてコミュニケーション力や専門スキルを高めていくことが大切です。

まとめ

AI(人工知能)の発展はめざましく、定型的な業務は将来AIが担当することになるとも言われています。薬剤師の仕事には調剤業務や薬剤管理など、一部にはAIやロボットが活躍する業務も存在しますが、患者さんとのコミュニケーションは薬剤師にしか行えません。

AIの時代に活躍できる薬剤師になるには、コミュニケーションスキルを磨き、専門性を高める必要があります。患者さんの様子を確認し、不安を取り除きながら薬を処方するために、今後も薬剤師は活躍していくでしょう。

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