薬剤師の転職お役立ちコラム COLUMN

2022/10/03

病院薬剤師と薬局薬剤師の違いとは?働くメリットと向いている人の特徴

「薬剤師」と一口に言っても、薬剤師は「病院薬剤師」と「薬局薬剤師」の2つに分けられ、業務内容や取り扱う薬剤などにも違いがあります。薬剤師として働く人の中には、「病院薬剤師と薬局薬剤師の何が違うのか詳しく知りたい」と考える人もいるのではないでしょうか。

当記事では、病院薬剤師と薬局薬剤師の違いについて、働くメリットなどを踏まえながら解説します。違いを知りたいと考えている人はもちろん、転職など今後のキャリア形成に生かしたいと考えている人も、ぜひ参考にしてください。

1.病院薬剤師と薬局薬剤師の違いとは?

病院薬剤師と薬局薬剤師には両方に「薬剤師」という言葉がついているものの、さまざまな点で違いがあります。ここでは、両者の違いを明確にするために、「業務内容」「取り扱う薬剤」「患者さんと関わる期間」「必要なスキル・条件」の4点について詳しく解説します。

1-1.業務内容

病院薬剤師と薬局薬剤師の業務内容は、一覧でまとめると下記の違いがあります。

仕事内容 病院薬剤師 薬局薬剤師
調剤業務
製剤業務
注射調剤業務・注射薬混合調製業務
救命救急業務 ×
医薬品情報業務
医薬品管理業務
治験業務 ×
病棟薬剤業務
薬剤師外来
専門薬剤師
チーム医療

(○=行う/×=行わない/△=一部行う)

・病院薬剤師の業務

病院薬剤師は病院勤務となるため、救急救命業務や病棟業務も担当します。救急救命業務とは、救急外来で来院する、あるいは搬送される患者さんに対応する業務です。一刻をあらそう場合もあるため、落ち着いた対応と状況に応じた迅速な判断が求められます。

他には、治験業務があることも病院薬剤師ならではの特徴です。救急外来で受診する患者さんのために夜間勤務があるため、勤務形態の違いも理解しておきましょう。

・薬局薬剤師の業務

薬局薬剤師は地域医療の担い手として、病院から発行された処方箋に基づく調剤や、ドラッグストアでお客さんの症状に合わせた薬の提案などをします。在宅医療を受けている患者さんの自宅を訪問して服薬指導をすることや、店舗経営に関する幅広い業務を担当することも薬局薬剤師の特徴です。

なお、調剤薬局やドラッグストアが主な勤務地となるため、救命救急業務や治験業務はありません。

1-2.取り扱う薬剤

業務内容が幅広いことも関係し、病院薬剤師のほうが取り扱う薬剤が多い傾向にあります。たとえば、注射薬や治験薬などは病院だからこそ取り扱う薬剤です。また、医療機器が充実している病院が多いため、多様な機器を活用することも可能です。

薬局薬剤師の場合、注射薬や治験薬などを取り扱う可能性は低いと言えるでしょう。

1-3.患者さんと関わる期間

病院薬剤師と薬局薬剤師では、1人の患者さんと関わる期間の長さが異なります。病院薬剤師の場合は患者さんが入院している間に接するため、退院後の接点が少なくなります。

一方で薬局薬剤師の場合は、利用する期間が限定されず、同じ患者さんと長期的な関係を築くことが可能です。一度かかりつけ薬局として選んでもらえば、自分や家族が薬を必要とするタイミングごとに訪れるため、数年単位で接するケースもあるでしょう。

1-4.必要なスキル・条件

病院薬剤師は病棟業務が多く、医師のカルテや検査データを参照したり、医療チームに加わったりします。万が一医師の処方箋や指示に疑わしい点があったときは、薬剤師として疑義照会をしなければなりません。病院薬剤師は高度医療に携わる機会も多いため、絶えず勉強を続ける姿勢などが必要です。

その他、病院薬剤師には下記のスキルや条件が求められます。

  • 薬学管理の専門家としての判断力
  • 調剤や製剤の知識
  • 救命救急や治験など、高度な業務に携わるための勉強

調剤薬局などに勤務する薬局薬剤師は、調剤室で調剤業務をこなすだけでなく、来訪したお客さんの対応も業務内容に含まれます。そのため、お客さんを不快にさせない接客スキルや、体調、常用薬についてヒアリングする能力が必要です。

その他、薬局薬剤師に求められるスキルや条件は下記の通りです。

  • 接客スキル
  • 調剤の知識
  • ヒアリングや服薬指導・服薬歴の管理など、お客さんに寄り添った対応を行う姿勢

2.病院薬剤師として働く4つのメリット

病院薬剤師には、病院薬剤師ならではのメリットが存在します。実際に病院薬剤師として働く場合、あらかじめどういったメリットがあるのか把握しておくと、転職後にギャップを感じることも少なくなるでしょう。

ここでは、病院薬剤師として働く際のメリットを4つ解説します。

2-1.臨床医療・チーム医療に携われる

病棟で勤務する病院薬剤師は、臨床医療・チーム医療に携わることができます。入院治療や救命救急治療に薬学管理の専門家として関わり、さまざまな疾患と症状について学べることは病院薬剤師の特権です。

病院薬剤師の業務をこなすためには日々の勉強が欠かせないものの、学んだ知識の成果を生かし、スキルアップできる場が豊富に用意されています。また、臨床医療・チーム医療に携わる中では、自分から処方提案や意見するケースもあります。責任も大きい一方、提案した内容が採用され、患者さんの症状に対して効果が見られたときには大きなやりがいを得ることが可能です。

処方した医薬品で患者が元気になったときは、病院薬剤師にとって喜びを感じられる瞬間でもあります。

2-2.薬剤師として最先端の医療現場に立てる

病院の医療現場では、新薬の抗がん薬や抗菌薬などを使用するケースがあります。承認されたばかりの新薬は情報量が少ないため、率先して新薬の情報収集を行い、医師へ情報提供しなければなりません。

新薬の安全性や副作用・併用禁忌について調査し、投与量や使用方法の提案を通して最先端の医療現場に立てることは、病院薬剤師ならではのやりがいです。

また、治験業務では開発中の治験薬について被験者のモニタリングや症例報告を行います。新しい治療法・予防法についての研究に携われる点は、病院薬剤師のメリットです。治験業務に携わる病院薬剤師は、治験薬の保管管理を任される治験薬管理者に選任されることもあります。

2-3.病院薬剤師ならではの知識を得られる

病院は医師・看護師・医療技術職など、さまざまな医療スタッフが働いている施設です。病院薬剤師は専門性がある他職種のスタッフと関わることで、病院薬剤師ならではの知識を得ることができます。

医師に処方薬が使われる具体的な症例や薬学療法について聞いたり、看護師による投薬方法を見たりなど、病院における薬の使い方を間近で確かめることは貴重な経験です。

病院薬剤師は入院患者と関わる機会も少なくありません。患者さんから服薬状況について相談をされたときに詳しくヒアリングできる点は、病院薬剤師ならではの魅力です。病院薬剤師は薬以外の質問を受けることもあるため、患者への対応力やコミュニケーションスキルも磨けます。

2-4.長く勤めるほど基本給がアップする

調剤薬局などで勤務する薬局薬剤師と比べると、病院薬剤師の初任給は低いとされています。しかし、病院には定期的な昇給があり、長く勤めるほど基本給はアップすることが魅力的なポイントです。

基本給の金額はボーナス・退職金の算定に大きく影響するため、病院薬剤師は長く勤めるほど年収アップの可能性が高くなります。

3.薬局薬剤師として働く3つのメリット

薬局薬剤師として働くことには、病院薬剤師として働く場合と異なるメリットがあります。薬局薬剤師と病院薬剤師の違いについて理解をさらに深めるためにも、薬局薬剤師として働くメリットを押さえましょう。

ここでは、薬局薬剤師として働く3つのメリットを紹介します。

3-1.求人が多い

調剤薬局やドラッグストアはどの地域にもあり、多くの店舗が薬局薬剤師を必要としています。そのため、市場全体に薬剤師求人が多く、就職・転職しやすい点がメリットです。就職先の選択肢が増えれば増えるほど、自分が希望する労働条件を満たし、理想とする働き方を実現できる可能性が高まります。

正社員以外の雇用形態を募集しているケースも多いため、家事や育児と平行して働きたい人にもおすすめです。

3-2.プライベートを確保しやすい

薬局薬剤師はプライベートを確保しやすい点もメリットです。勤務先によるものの、調剤薬局やドラッグストアでは残業が少ない傾向にあります。

特に午後の時間帯は混雑する場合が少ないため、自分の業務に集中することが可能です。プライベートを充実させることで、仕事へのモチベーションが上がるなどの相乗効果も期待できます。

3-3.薬剤師に必要なスキルを磨きやすい

薬局薬剤師として働く上では、患者さんとのコミュニケーション能力や、症状に合わせて最適な商品を提案する能力、悩みに対して親身に寄り添う能力が必須です。調剤薬局やドラッグストアには若い人から年配の人まで、幅広い悩みを抱えた患者さんが訪れます。一人ひとりの患者さんに対応する中で、薬剤師として必要なスキルを高めることが可能です。

一度身に着けたスキルや培った経験は、薬剤師として働く上で将来的にも役立つため、キャリアの幅も広がるでしょう。

4.病院薬剤師・薬局薬剤師として働くためには?

病院薬剤師として働くためには、前提として薬剤師国家試験に合格し、薬剤師免許を取得する必要があります。薬剤師免許がない人は、薬剤師求人への応募や就職・転職ができません。薬剤師国家試験の受験資格は下記の通りです。

  • 1:6年制大学で薬剤師養成課程を卒業
  • 2:4年制大学で薬学課程を卒業し、薬剤師受験資格が得られる大学院で、薬学の修士または博士課程を修了

(2006年~2017年に大学を入学した人に限る)

出典:厚生労働省「薬剤師国家試験」

試験内容は、必須問題と一般問題(薬学理論問題試験と薬学実践問題試験)の2つから構成されます。それぞれの詳細は下記の通りです。

必須問題試験
  • 物理・化学・生物
  • 衛生
  • 薬理
  • 薬剤
  • 病態・薬物治療
  • 法規・制度・倫理
  • 実務
薬学理論問題試験
  • 物理・化学・生物
  • 衛生
  • 薬理
  • 薬剤
  • 病態・薬物治療
  • 法規・制度・倫理
薬学実践問題試験
  • 物理・化学・生物
  • 衛生
  • 薬理
  • 薬剤
  • 病態・薬物治療
  • 法規・制度・倫理
  • 実務

引用:厚生労働省「薬剤師国家試験」/引用日/2022/09/09

国家試験の合格基準については、下記のように明記されています。

  • 問題の難易を補正して得た総得点について、平均点と標準偏差を用いた相対基準により設定した得点以上であること
  • 必須問題について、全問題への配点の70%以上で、かつ、構成する各科目の得点がそれぞれ配点の30%以上であること

引用:厚生労働省「薬剤師国家試験のあり方に関する基本方針」/引用日/2022/09/09

薬剤師国家試験に合格すると、自動的に薬剤師免許が届くわけではありません。試験の合格証書が届いた後は免許申請の手続きを行います。免許申請に必要となる書類は下記の4点です。

  • 免許申請書
  • 診断書
  • 戸籍謄本又は住民票の写し若しくは住民票記載事項証明書
  • 登録済証明書用はがき

引用:厚生労働省「薬剤師免許証の申請等について」/引用日/2022/09/09

必要書類を最寄りの受付窓口に提出することで、薬剤師名簿に登録が行われ、免許証が発送・交付されます。免許申請から交付までにかかる期間は2~3か月程度です。その後、薬剤師免許が有効化され、晴れて病院薬剤師として働く準備が整います。

出典:厚生労働省「薬剤師免許証の申請等について」

5.病院薬剤師・薬局薬剤師のそれぞれに向いている人の特徴

病院薬剤師に向いている人の特徴は下記の通りです。

  • 専門性を高めたいと思っている
  • 他の病院スタッフと円滑にコミュニケーションを取れる
  • 体力がある

病院では特定の分野に集中して業務を担当できるため、専門性を高めたいと考えている人に向いています。また、職場には医師や看護師など他の医療スタッフもいることから、高いコミュニケーション能力が必要です。協調性を持って、うまく立ち回りながら業務に取り組むことが求められます。

病院薬剤師は夜勤があるため、生活リズムが乱れやすくなります。体力がある人であれば、夜勤の勤務にも対応しつつ安定したパフォーマンスを発揮できるでしょう。

一方、薬局薬剤師に向いている人の特徴は下記の通りです。

  • 患者さんにいつでも明るく接することができる
  • 事務処理が得意である
  • 患者さんと主体的に関わりたいと思っている

調剤薬局やドラッグストアにはさまざまな患者さんが来店するため、誰に対しても明るく接することができる人が向いています。また、書類作成や在庫確認をはじめとしたマルチタスクも多いことから、事務処理能力があると業務をスムーズにこなせるでしょう。

患者さんの悩みをヒアリングして最適な提案ができるよう、患者さんと主体的に関わることも重要な要素です。

まとめ

病院薬剤師と薬局薬剤師は混同されることもあるものの、業務内容や取り扱う薬剤、必要なスキルが異なるため、自分の特性を踏まえて合う種類を考えることが大切です。病院薬剤師は主に患者さんの入院期間に限定して接する一方で、薬局薬剤師は長期的に接する特徴があります。

また、病院薬剤師と薬局薬剤師には、それぞれにメリット・デメリットや向いている人の特徴があります。当記事の内容を参考に、今後のキャリアについて考えてみましょう。

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