薬剤師の転職お役立ちコラム COLUMN
2023/06/21
薬剤師が在宅をやりたくない理由は?大変さと在宅医療での役割を解説
薬剤師として調剤薬局で働いていると、在宅医療に関わる機会も増えることでしょう。しかし、在宅医療に関する業務は精神的・身体的な負担が多い場合もあるため、あまりやりたくないと感じる薬剤師の方もいるかもしれません。
当記事では、在宅医療での薬剤師の役割と大変さ、在宅医療に関わる薬剤師の将来性について詳しく解説します。在宅医療での仕事内容を知り、薬剤師としてのキャリア形成を考えるきっかけとして参考にしてください。
1.在宅医療での薬剤師の役割は?
近年の在宅医療推進にともない、「薬の専門家」である薬剤師が在宅医療の現場で求められる機会も多くなっています。
薬剤師が在宅医療で担う役割は、専門的な薬の知識に基づいて、患者さんにとって最適、かつ効率的で安全な薬物療法の提供をすることです。厚生労働省は在宅医療での薬剤師の役割を以下のように定義しています。
処方せんに基づき患者の状態に応じた調剤 (一包化、懸濁法、麻薬、無菌調剤)
患者宅への医薬品・衛生材料の供給
薬歴管理 (薬の飲み合わせの確認)
服薬の説明 (服薬方法や効果等の説明、服薬指導・支援)
服薬状況と保管状況の確認 (服薬方法の改善、服薬カレンダー等による服薬管理)
副作用等のモニタリング
在宅担当医への処方支援 (患者に最適な処方(剤型・服用時期等を含む)提案)
残薬の管理、麻薬の服薬管理と廃棄
ケアマネジャー等の医療福祉関係者との連携・情報共有
医療福祉関係者への薬剤に関する教育
引用:厚生労働省「在宅医療における薬剤師の役割と課題」/引用日2023/06/08
中でも、代表的な3つの役割について、内容を解説します。
医薬品の提供 |
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薬剤師は在宅医療の患者さんに対し、状態に応じた調剤と医薬品・衛生材料の提供を行います。処方箋に基づいて、一包化などの一人ひとりに合わせた最適な調剤を行う他、自分で薬を取りに行くことが難しい患者さんに代わり、医薬品を届けるのも重要な仕事です。 在宅医療を利用する患者さんは、身体機能や認知機能の低下により、受診が困難な場合もあります。薬剤師は、本人ができない部分を支援することで、患者さんと家族の負担を軽減し、薬物治療の効果と安心を保つ役割を担っています。 |
服薬指導 |
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服薬指導とは、患者さんや家族に対して薬の効能や服用方法、注意点などを説明することを指します。患者さんとコミュニケーションをとりながら、体調の変化や不安な点を含めた服薬状況を把握し、必要な指導や疑問の解消を通して、服薬の効率化と事故防止につなげます。 薬の副作用や飲み合わせを説明し、保管方法を指導することも在宅医療における薬剤師の重要な役割です。複数の医療機関から薬が処方されている場合や、認知症の方など、患者さん自身で正しい服用が困難な場合、飲み合わせの確認や薬カレンダーへの配薬も行います。 |
医師や関係者との情報共有 |
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在宅医療では、薬剤師をはじめ、医師や看護師、ケアマネージャーなどの医療福祉関係者が1つのチームとなり患者さんに関わります。円滑なチームケアを実施するため、情報の共有や連携は重要なポイントです。 薬剤師は、患者さんに薬の副作用や問題が見られた場合、担当医に対する報告や、薬の変更を提案して処方の支援を行います。 また、訪問看護師やケアマネージャーなど、患者さんが利用する医療・福祉サービスの担当者とも情報を共有し、連携と薬に関する教育によって薬剤治療の有効化に努めます。 |
2.薬剤師が在宅医療をやりたくないと思う理由3つ
在宅医療の利用増加にともない、薬剤師の仕事に占める在宅医療業務の割合も高まっています。しかし、通院が困難な患者さんにとって便利な在宅医療は、薬剤師のやりがいが大きい反面、負担の多さから「やりたくない」と思う薬剤師もいる状態です。
ここでは、薬剤師が在宅医療で特に大変だと感じる点を3つ紹介します。
2-1.書類作業が多い
在宅薬剤師にとって、書類作成にかかる時間と量の多さは、特に大変だと感じる点です。
在宅医療の現場では、重要事項説明書の取り交わし、報告書や計画書の作成など、患者さんごとに多くの書類を作成する必要があります。毎日作成するもの、毎月作成するものも多く、継続的に書類作業が生じます。薬剤師が担当する患者さんの人数が多ければ多いほど、書類作成の業務量も膨大となります。
また、職場によっては通常業務として調剤薬局を訪れる外来患者の対応も行うため、書類の作成が薬局の営業時間外となり、残業につながることもあります。
患者宅への訪問、店舗での調剤業務、書類の作成など、業務が多岐にわたり忙しい点が、在宅薬剤師が大変さを感じる理由の1つです。
2-2.コミュニケーションを取るのが大変
在宅の薬剤師には、高いコミュニケーション能力が求められます。
訪問時間の中で、薬剤師が感じ取る患者さんの状態や変化、問題や改善点の発見などは、薬物治療の効果はもとより治療内容の変更にも関わる重要な情報です。一見すると些細に見える変化が隠れた病気や機能低下の発見につながり、ときには患者さんの命を救うこともあります。
薬剤師は、患者さんと信頼関係を築き、健康管理に必要な情報を会話の中で引き出します。さらに顔色や動作、自宅内の様子から患者さんの状態を感じ取る観察力も必要です。
また、患者本人以外にも、家族や連携する医療福祉関係者など、関わる相手が多いのも在宅医療の特徴です。1対1で患者さんに関わる責任や、多方面への細やかな連絡など、コミュニケーションに苦手を感じる人には大きな精神的負担となります。
2-3.患者さんの家に通うのが大変
在宅薬剤師が1日で訪問する件数は、5~10件、多いと15件に及ぶ場合もあるため、移動だけでも大変な負荷がかかります。加えて、患者さんが暮らしている環境はさまざまであり、体力的にも精神的にも辛いと感じることもあるかもしれません。
薬剤師の在宅訪問回数は、基本的に月に4回が上限で、1回の訪問時間は10分程度の場合もあります。限られた時間の中で薬に関する業務の他、患者さんの生活環境も観察して健康への助言を行う必要がある点も、在宅薬剤師にとってプレッシャーになっています。
3.在宅医療に薬剤師は必要?
結論から言うと、在宅医療に薬剤師は必要不可欠です。
国は超高齢化社会の到来に向け、地域包括ケアシステムの構築を進めています。地域包括ケアシステムとは、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい生活をできるよう、医療や介護などのサービスを地域の特性に応じて作り上げることです。
超高齢化社会において地域医療を提供し続けるため、在宅医療とかかりつけ薬剤師の利用は重要視されています。
かかりつけ薬剤師とは、患者さんの服薬情報を1か所の薬局で一括管理して把握し、24時間の対応や在宅患者さんへの薬学的管理・指導を行うシステムです。薬の副作用が懸念される疾病の外来治療への移行、療養環境の多様化が進む中で、患者さんへ最適で安全な薬物治療を継続できるよう、専門性に基づく活躍が求められています。
在宅医療を利用する患者さんの増加にともない、在宅医療における薬剤師の「薬の専門家」としてのニーズはますます高まるでしょう。チームケアの中で、薬を通して患者さんの状態を把握し、医師や医療福祉関係者と連携をとるのは薬剤師の役割です。在宅医療にとって、薬による治療とチームによる連携は欠かすことのできない重要な要素であるため、在宅医療に薬剤師は必要不可欠と言えます。
4.在宅をやりたくないときはどうすればいい?
在宅の薬剤師は、メリットがある反面、デメリットもあります。
メリット | デメリット |
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デメリットの負担が大きく、どうしても在宅薬剤師を続けるのが辛いときは上司や会社に外来のみの勤務に変更・異動できないか、打診するとよいでしょう。外来のみに変更できない場合や、職場を変えても問題ない人には、転職も有効な解決策です。
薬剤師の勤務先は複数あり、業務内容も異なります。在宅に携わるのは主に調剤薬局のため、それ以外の店舗や以下の転職先を選ぶとよいでしょう。
- 在宅対応していない薬局(薬局薬剤師)
- ドラッグストア(OTC専門薬剤師、ドラッグストア薬剤師)
- 病院(病院薬剤師)
転職の際は、薬剤師転職サイトや転職エージェントを利用すると、希望やキャリアに合った条件を選べて便利です。薬剤師向けの求人が揃っているため、「土日休み」「残業少なめ」など、プライベートを重視したい薬剤師にも選択肢が広がります。
また、専属コーディネーターによるカウンセリング、面接サポートなど、求職者一人ひとりに寄り添ったサポートを受けられるエージェントを利用する方法もあります。
まとめ
薬剤師は在宅医療の現場でも活躍しているものの、薬剤師の役割は多岐にわたります。書類作成や患者さん・他職種の関係者とのコミュニケーションなど精神的・肉体的に大変だと感じる薬剤師さんも少なくありません。しかし、高齢化が進み、地域包括ケアシステムが広がっていく中、薬剤師は在宅医療の現場でさらに存在感を増していく職種だと言えるでしょう。
どうしても在宅医療に関わるのが負担だという場合は、在宅医療に関わらない部署や職場に変わるのも1つの方法です。転職を考えるときは、専門のコーディネーターによるサポートを受けられるエージェントサービスを利用することをおすすめします。
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