薬剤師の転職お役立ちコラム COLUMN
2023/04/21
薬剤師も活躍するNST(栄養サポートチーム)とは?必要資格も解説
病院に勤務する薬剤師さんの中には、NST(栄養サポートチーム)の一員として患者さんのケアにあたっている方もいます。栄養サポートチームとはチーム医療の一環であり、他職種の専門家と協力しながら患者さんの支援を行います。
当記事では、NST(栄養サポートチーム)の概要と、NSTで薬剤師がどのように活躍できるのか詳しく解説します。チーム医療について知識を深めたい方・NSTの一員として活躍したいと思っている方はぜひ参考にしてください。
1. NST(栄養サポートチーム)とは?
NST(栄養サポートチーム)とは、入院中や外来通院中の患者さんに対して、適切な栄養管理をサポートする医療チームのことです。食欲が低下している方や栄養状態が悪化している患者さんに対して多職種で連携し、治療やケアにあたります。
NSTは「Nutrition Support Team」の略で、中心静脈栄養の適応と安全管理を目的としてアメリカで誕生しました。
今では、日本病院機能評価機構の評価項目にも取り入れられており、診療報酬においても「栄養管理実施加算」や「栄養サポートチーム加算」などが新設され急速に普及しています。
医療機関にはさまざまな分野の医療専門職が在籍しています。NSTはそれぞれの専門家が連携し、対象者に適切な治療や生活のサポートを行うチーム医療の一環です。
1-1. NSTとして活躍する職種
NSTでは複数の医療専門職が多角的な視点で関わることにより、適切な栄養サポートを行うことが可能です。
NSTのチーム医療に関わる医療専門職には以下のような職種があります。
- 医師
- 看護師
- 薬剤師
- 管理栄養士
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
- 臨床検査技師
- 診療放射線技師
- 歯科医師
- 歯科衛生士
- 医療ソーシャルワーカー
NSTではそれぞれの医療専門職が知識と技術をいかして、一人ひとりの患者さんの状況に対応した治療やケアにあたります。薬剤師も専門分野である薬学の知識に基づいた観点からチーム医療に貢献できます。
1-2. NSTの活動内容
NSTの活動内容には「スクリーニング(ピックアップ)」「カンファレンス」「勉強会」があります。
「スクリーニング(ピックアップ)」とは、NSTによる栄養管理が必要な患者さんを抽出することです。病院によっても異なりますが、下記の特徴がある患者さんはNSTによるサポートが必要だと言えるでしょう。
- 血清アルブミン値 3.0 g/dl以下の低栄養患者
- ステージⅡ以上の褥瘡がある患者
- 経管栄養の患者
- 静脈栄養の患者
- 糖尿病の患者
- 食欲が低下している患者
- 食事量が低下している患者
入院中の患者さんは身体状況が日々変化しやすいため、NSTによる介入を必要とする方を見逃さないようにしなければなりません。主治医からNSTの介入依頼があった患者さん以外にも、栄養状態を的確にスクリーニングするのが大切です。NST活動でスクリーニングのシステムを確立しておけば、栄養管理の介入が必要な対象患者をもれなく拾い上げられます。
スクリーニングによりNSTの介入が必要だと判断された方には、栄養アセスメントを実施し計画書が作成された後に、その方に応じたサポートが始まります。
NSTによる介入が開始された後も、定期的にNSTメンバーによる「カンファレンス」を実施します。定期的に患者さんの状況をモニタリングしながらアセスメントを繰り返し、患者さんの病態に対応した栄養管理を行うことが大切です。多職種で構成されるNSTメンバーそれぞれの視点を用いることで、適切な栄養サポートが実現できます。
また、患者さんへの栄養サポートは、NSTメンバーだけでなく職場のスタッフ全体の取り組みとして行う必要があります。院内での「勉強会」や「症例検討会」の開催などNST啓発活動も大切な役割の1つです。
2. NSTで薬剤師はどのように活躍する?
薬剤師がNSTで求められる役割は、薬学的視点からの栄養サポートになります。NSTにおいて、薬剤師が専門性を発揮できるのは以下のような支援です。
静脈・経腸栄養療法の支援 |
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薬剤師は静脈栄養・経腸栄養療法の患者さんに対する処方設計支援として、適正な薬の種類や量を医師に提案することができます。病態別に栄養製剤を選択したり、中心静脈栄養の調整を行ったりするのも重要な役割です。 |
栄養療法の確認 |
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栄養療法が適切に行われているか確認するのも薬剤師の役割です。静脈栄養剤や経腸栄養剤とお薬との相互作用や投与速度の調整、器具の使用方法など、栄養剤や輸液が適正に使用できるように専門的立場から情報提供します。 |
患者さん・家族への情報提供 |
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薬剤師は、静脈栄養・経腸栄養療法の患者さんやご家族への情報提供・指導・支援も行います。特に、ご自宅で生活されている患者さんやご家族への在宅医療のアドバイスは大切な役割です。在宅であれば、ご家族がサポートしているケースもあるため、静脈栄養剤や経腸栄養剤の適正使用法を教えたり、手技が正しいかを確認したりします。お薬・お食事との相互作用などの服薬指導や摂取するとよい栄養素や栄養補助食品などの情報提供も行えます。 |
3. 薬剤師がNSTで活躍するためには?
高齢化が進むと、適切な栄養管理を必要とする患者さんが増え、NSTの需要も高まると考えられます。薬剤師がNSTで活躍するための資格に「栄養サポート(NST)チーム専門療法士」があります。
栄養サポートチーム専門療法士は薬剤師の他に、下記の国家資格を取得している人も目指せます。
- 管理栄養士
- 看護師
- 臨床検査技師
- 言語聴覚士
- 理学療法士
- 作業療法士
- 歯科衛生士
- 診療放射線技師
主に、静脈栄養・経腸栄養を用いた臨床栄養学に関して専門知識と技能を備えることで認定されます。NSTへの所属に必須の資格ではありませんが、スキルアップを目指して資格取得にチャレンジしてみるのもよいでしょう。
ここでは、栄養サポートチーム専門療法士になるまでの流れや認定試験について解説します。
3-1. 栄養サポートチーム専門療法士になるまでの流れ
「栄養サポートチーム専門療法士」は、一般社団法人日本臨床栄養代謝学会が認定する、専門資格です。栄養サポートチーム専門療法士を申請するためには以下の条件が必要です。
- (1)次にあげるいずれかの認定対象国家資格を有している
- 「管理栄養士」「看護師」「薬剤師」「臨床検査技師」「言語聴覚士」「理学療法士」「作業療法士」「歯科衛生士」「診療放射線技師」
- (2)認定対象国家資格で、医療・福祉施設において5年以上、栄養サポート関連の業務に従事した経験がある
- (3)日本臨床栄養代謝学会主催の「学術集会」「NST専門療法士受験必須セミナー」や、学会が認める「栄養に関する全国学会」「地方会」「研究会」に参加し、規定の単位を取得している
- (4)認定施設において、合計40時間の実地修練を修了している
- (5)上記の条件を満たした上で、認定試験に合格している
実地修練では、NSTが稼働し日本静脈経腸栄養学会による学会認定教育施設の認定を受けている病院で合計40時間の実習を行います。
3-2. 栄養サポートチーム専門療法士の認定試験
栄養サポートチーム専門療法士の認定試験は毎年1回行われています。認定試験の受験料は10,000円です。認定試験を申請するときは申請書類に必要な書類を添付し、認定・資格制度委員会に提出します。
申請書類とともに提出が必要な書類は以下の通りです。
- 最終学歴から申請時までの履歴書
- 国家資格の免許証の写し
- 日本臨床栄養代謝学会学術集会参加証の原本、NST専門療法士受験必須セミナー修了証の写し、学会の認めた全国学会、地方会、研究会等への参加証の写し
- 認定教育施設の実地修練修了証
出典:日本臨床栄養代謝学会「栄養サポートチーム専門療法士認定規程」
栄養サポートチーム専門療法士の認定試験で出題される問題は80問のマークシート方式で、試験時間は2時間です。試験対策としては、必ず受講しなくてはならない「NST専門療法士受験必須セミナー」でしっかり学習することが大切です。他には、日本静脈経腸栄養学会の「ハンドブック」「ガイドライン」「基本問題集」「過去問題集」を使って学習するとよいでしょう。
まとめ
NST(栄養サポートチーム)とは、食欲が低下していたり栄養状態が悪化していたりする患者さんに対して、栄養管理を行いながら症状の改善や合併症の予防を行うチームのことです。薬剤師もチーム医療の一員としてNSTに加わり、主に栄養療法の確認や専門知識の情報共有を行います。
NSTに加わるために必須の資格はないものの、栄養サポートチーム専門療法士の資格を取得すると、専門的な知識があると証明できます。また、他職種の仲間と連携して患者さんのサポートにあたるためのチームワークも必要です。
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