薬剤師の転職お役立ちコラム COLUMN
2022/01/05
留学する薬剤師が増えている理由は?準備するべきことと流れを紹介
国際交通網の発展によるグローバル化が進行しつつある中、留学に関心を持つ薬剤師は少なくありません。病院や調剤薬局に勤務する傍ら、「ワーキングホリデー(ワーホリ)に参加したい」「海外の大学院の薬学部で研究したい」などの夢を持つ薬剤師もいるでしょう。
当記事では、留学する薬剤師が増えている理由や、薬剤師が留学する際の準備の流れ、注意点を解説します。留学によって時代の需要に沿ったスキルを習得し、キャリアアップにつなげましょう。
1. 薬剤師が留学する主な理由2選
現在薬剤師として働く人が留学する事例は決してめずらしくありません。大手のドラッグストアや製薬会社の中には海外研修制度を用意し、教育環境を提供する組織もあります。
では、薬剤師の留学にはどのような魅力が存在するのでしょうか。薬剤師が留学する主な理由は「知見を増やす」「キャリアアップを図る」の2つが挙げられます。
1-1. 薬剤師としての知見を増やすため
医学・薬学に関する研究活動は、世界各国で進められています。薬剤師が留学することは各国で進められている研究に触れて知見を広げるためのよい手段です。
近年、医療の高度化・多様化などの影響を受けて、薬剤師の役割が大きく変化しています。世界最先端の研究や論文を通して高度な専門性を身につければ、時代の需要に沿った人材として活躍するための基盤を養うことが可能です。
また、薬剤師が留学すると、研究者と直接話したり教員に質問したりする機会を得られることもあります。「最新の薬学知識を身につけて患者さんに貢献したい」と考える薬剤師にとって、留学は自己実現を果たすための選択肢の1つになるでしょう。
1-2. 薬剤師としてのキャリアアップを実現するため
日本の薬剤師の平均年収は、約565万円です。薬剤師が語学力を身につけて時代の需要に沿った人材になることは、平均年収を上げるために有効な方法と言えます。
2020年10月末時点における日本の外国人労働者数は1,724,328人と、過去最高を記録しました。外国人労働者が今後さらに増加すると、語学力を持つ薬剤師に対する需要がより高まる可能性があります。
出典:厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況【概要版】(令和2年10月末現在)
また、留学によって実務レベルの語学力を身につけることも可能です。そのため、自分自身の市場価値を高めてキャリアアップを実現することを目的に留学する薬剤師もいます。
2. 薬剤師が留学するときに準備するべき3つのこと
薬剤師が留学する際には、さまざまな事前準備が必要です。事前準備を怠ると留学のメリットが薄れたり将来的なキャリアプランに影響したりする可能性があるため、注意しましょう。薬剤師が留学するときに準備するべきことは、「目的の明確化」「留学先の情報収集」「留学費用」の大きく分けて3つです。
2-1. 目的を明確にする
薬剤師が留学する際には、相応の時間と費用が必要です。留学を目指す理由をよく考えて、明確な目的のもとで実行しましょう。
「留学」と一口に言っても、目的や実行方法にはさまざまなパターンが存在します。「語学力を養うための留学」と「薬剤師としての知見を広げるための留学」では、実行方法に違いが生じるでしょう。また、目的が異なれば留学中の過ごし方も変化します。自分自身の養いたい知識・必要な経験を明確化した上で留学に臨むことが、有意義な時間を過ごすコツです。
反対に、明確な目的を持つことなく留学すると、時間と費用を浪費するリスクがあります。帰国後のキャリアプランを踏まえて明確な目的を定め、時間と費用を有効に活用しましょう。
2-2. 留学先の情報をよく調べる
明確な目的を定めた後は留学先を決定し、計画を具体化するための情報収集を進めます。薬剤師の留学先は、主にアメリカ(米国)・中国・カナダ・イギリス・オーストラリアなどです。いずれの国を選択するとしても、以下の情報を調査する必要があります。
- ビザの申請方法
- 役所における事務手続き
- 犯罪の発生しやすいエリア
- 現地の文化や物価水準
社会人が退職して長期で留学する場合、国民健康保険に加入したり失業保険を支給したりするための事務手続きが必要です。必要な事務手続きは個人の状況によって異なるため、居住している地域の自治体に問い合わせて詳細を確認しましょう。
留学先の判断に迷っている人は相談会やセミナーに参加すると、効率的に情報収集することができます。また、薬剤師の留学を斡旋するエージェントに問い合わせて、個別相談を受けることもよいでしょう。
2-3. 留学費用を計算して用意する
留学先によって異なるものの、薬剤師の留学費用は500万円程度を要すると言われています。留学費用の目安は大学や大学院の授業料・生活費などにも左右されるため、自分自身の希望を踏まえた上で、大まかな目安を把握しましょう。
留学費用を用意する方法には、奨学金制度や留学ローンなどがあります。留学ローンとは、国や金融機関から留学資金を借り入れられる金融商品です。奨学金制度や留学ローンの利用には一定の条件が課されることが多いため、あらかじめ詳細を確認し、自分に合う方法を選択しましょう。
3. 【STEP別】薬剤師が留学するまでの流れ
留学の準備にはまとまった期間を要することから、大まかな手順をあらかじめ把握し、着実に進める必要があります。留学の計画段階から現在の職場を退職するまでの流れは、おおむね下記の通りです。
1 | (6か月前~)留学の計画を立てる |
---|---|
帰国後のキャリアプランや留学の目的などを踏まえて、具体的な計画を立てます。計画を立てる際は留学先と実行方法も検討し、どのような環境で学習・研究を行うかを明確化しましょう。 |
2 | (5か月前~3か月前)英語力をチェックし、留学期間を決める |
---|---|
民間の英語試験を受験します。受験後は試験結果に応じて留学期間を決定し、滞在先を検討しましょう。 |
3 | (3か月前~)ビザの手配をする |
---|---|
留学先の大学・大学院などの指定に従い、推薦状・英文履歴書などの書類を提出します。観光ビザや学生ビザの準備を要する場合は申請し、発行を受けてください。 |
4 | (3か月前~)退職連絡をして航空券を確保する |
---|---|
現在の職場と、退職時期や仕事の引き継ぎについて話し合います。その後、留学スケジュールに合わせて航空券を確保しましょう。 |
5 | (1か月前~)退職に伴う手続きを済ませる |
---|---|
国民健康保険・国民年金・失業保険など、退職に伴う役所手続きを済ませます。長期で留学する場合は海外転出届を提出することも検討しましょう。 |
留学先によっては留学保険への加入が義務化されていることもあります。留学中のケガ・疾病リスクに備えるためにも留学保険への加入を検討し、必要な補償を確保しましょう。
留学直前には、期間に応じた持ち物の準備が必要です。海外で現金を持ち歩くのは危険性が高いため、防犯対策の一環としてクレジットカードの準備をおすすめします。
4. 【注意点】日本の薬剤師免許は海外では使えない
日本の薬剤師免許を海外で使用することは、原則的に不可能です。そのため、日本の薬剤師免許だけを保有する薬剤師が海外で就労するためには、留学先の大学卒業後に試験を受験し、現地の薬剤師免許を取得しなければなりません。カナダなど一部の国では、国家試験と州の試験の両方に合格しなければ、現地の薬剤師免許の取得は不可能です。
また、現地の薬剤師免許を取得するにあたっては、実務レベルの医療英語力(医療現場で必要とされる英語)を要求される可能性が高いと言えます。医師や看護師とスムーズに会話できるレベルの医療英語力を身につけることは、多くの人にとって難題となるでしょう。
なお、タイやシンガポールなど一部の国では、日本人駐在員の通う病院などにおいて、日本の薬剤師免許しか持たない人の就労が認められるケースもあります。ただし、常に求人が出ているとは限らないため、できるだけ早い時期から情報収集を進めて就労先を探しましょう。
まとめ
留学する薬剤師が増えている理由は「世界最先端の研究に触れてスキルアップを目指す」「自分自身の市場価値を高める」の2つです。薬剤師が留学する際は、明確な目的を持った上で、実行に移す必要があります。
なお、日本の薬剤師免許だけでは多くの場合、海外で働くことが不可能です。一部の国では日本の薬剤師免許を持つ人の就労が認められるケースがあるものの、求人探しに苦労する可能性があるため、事前の情報収集を徹底しましょう。
新着コラム
-
2023/06/21
薬剤師が在宅をやりたくない理由は?大変さと在宅医療での役割を解説
-
2023/04/21
薬剤師も活躍するNST(栄養サポートチーム)とは?必要資格も解説
-
2023/03/08
薬剤師はMRに転職できる?MRの仕事内容や転職方法を解説
-
2023/02/09
AI時代の薬剤師の仕事は?AIを活用できる業務と必要スキルを解説
-
2022/12/16
薬剤師に求められる役割とスキル|勤務場所別の業務内容も解説
-
2022/07/12
薬剤師はうつ病になりやすい仕事?ストレスの原因と4つの対処法
-
2022/07/12
在宅療養支援認定薬剤師とは?必要なスキルから取得方法まで
-
2022/06/16
日本とアメリカの薬剤師の違いとは?スキルアップ・収入アップの方法も
-
2022/06/16
薬剤師が青年海外協力隊に参加するメリットは?活動する際の注意点も
-
2022/06/16
薬剤師がスキルアップを実現する方法4つ|身につけたいスキルと経験
-
2022/06/16
薬剤師が共感する「あるある」を紹介!つらさを感じるときの対処法も
-
2022/01/28
派遣薬剤師のメリット・デメリットは?勤務先の特徴や注意点
-
2022/01/28
一人薬剤師とは?魅力や大変な一面・向いている人の特徴
-
2022/01/05
留学する薬剤師が増えている理由は?準備するべきことと流れを紹介
-
2022/01/05
薬剤師は人間関係でよく悩む?4つの対処法とおすすめの転職サイト
-
2021/12/14
男性薬剤師が感じる職場の苦労とは|男性が活躍するためのポイントも
-
2021/12/14
企業で働く薬剤師の種類と仕事内容|転職のコツも
-
2021/11/16
薬剤師はブラックな仕事?よくある職場の特徴も3つ紹介
-
2021/11/16
薬剤師がクレームを受けたときはどう対処する?事前の予防策も
-
2021/09/27
薬剤師の結婚平均年齢|結婚年齢が高くなる原因も解説
-
2021/09/27
薬剤師資格は独学で取得できない理由|薬剤師になった後の独学方法も
-
2021/09/27
子育て中の薬剤師は復職できる?おすすめの職場の特徴も紹介
-
2021/09/27
【薬剤師必見】パターン別の転職事情と成功させるためのポイント2選
-
2021/08/11
薬剤師に向いてる人の性格や特徴は?職場別もあわせて紹介
-
2021/08/11
【女性薬剤師向け】平均年収・働きやすい職場の選び方
-
2021/07/15
薬剤師は海外でも働ける?求められる要素・給料相場・働くメリットも
-
2021/07/15
臨床薬剤師とは?業務内容・平均年収や求められるスキルも紹介
-
2021/06/03
薬剤師の転職失敗例3つ|失敗しやすい人の特徴と成功するための方法
-
2022/12/16
薬局薬剤師の仕事内容|調剤薬局・ドラッグストアの違いや職場環境も
-
2021/05/14
調剤薬局事務の平均年収|地域別・雇用形態別に解説!
-
2021/05/14
薬剤師を辞めたいと思うときによくある理由|取るべき3つの行動とは
-
2022/10/03
疑義照会とは?薬剤師が疑義照会をスムーズに進める方法
-
2021/02/22
【薬剤師】技術・能力の証明やキャリアアップを目指せる資格一覧
-
2021/02/22
薬剤師は英語を活かして働ける!英語力をアップさせる方法も解説
-
2021/02/22
薬剤師の働き方|生活スタイルや勤務している人数も紹介
-
2022/12/16
薬剤師が負う責任とは|事例・調剤過誤を防止するためのポイントも
-
2021/02/22
薬剤師に求められる役割とスキル|勤務場所別の業務内容も解説
-
2021/02/22
薬剤師は大変な仕事?理由や対策・やりがいも紹介
-
2020/12/28
薬剤師として働く魅力・やりがい&辞めたいときの対処法を紹介!
-
2020/12/28
薬剤師の将来性|AIや飽和状態に負けないために大切なこと
-
2020/11/13
薬剤師の離職率は高い?おすすめの転職サイトも紹介!
-
2020/11/13
薬剤師の平均残業時間|残業が多くなる職場別の原因と解決方法を紹介
-
2020/10/29
薬剤師の転職に年齢制限はある?転職の成功ポイントも詳しく紹介!
-
2020/10/29
薬剤師の退職金相場は?職場別の平均金額を説明
-
2020/08/25
薬剤師の転職は志望動機が重要|押さえるべき3つのポイント
-
2020/08/25
薬剤師の仕事内容とは?施設別の業務や年収・やりがいを説明
-
2020/08/04
かかりつけ薬剤師とは?仕事内容からメリット・デメリットまで
-
2020/08/04
薬剤師に必要なコミュニケーションとは?スキルを高めるコツも紹介
-
2020/08/04
MRとは?仕事内容から平均年収・就職に有利な資格までを紹介!
-
2020/06/15
薬剤師の勉強方法|キャリアアップするためには
-
2020/06/15
公務員薬剤師の仕事内容とは?3つの働き方を解説
-
2020/06/15
薬剤師の将来性について|多様化の進む中で求められる能力
-
2022/10/03
病院薬剤師と薬局薬剤師の違いとは?働くメリットと向いている人の特徴
-
2020/05/01
管理薬剤師の仕事内容|働くメリット・デメリットから就職方法まで
-
2022/10/03
漢方薬剤師とは?働くメリット・デメリットからなるための方法まで!
-
2020/05/01
薬剤師の平均的な給料(年収)相場|年収を上げる方法
-
2022/12/16
学校薬剤師の役割と仕事内容|報酬相場・求められるスキルも紹介
-
2022/10/03
薬剤師は副業できるの?おすすめの職種から注意点まで詳しく紹介
実績8,000人以上!!
薬剤師の転職サイト「ファーネットキャリア」では、 あなたのご希望条件に合った案件をご提案するため、掲載求人以外にも全国11万件以上の医療機関情報を元に求人案件をお探し致します。
しかも、経験豊富なコーディネーターが案件のご提供、面談シミュレーション、アフターフォローまでばっちりサポート!医療業界20年以上の就職・転職サポート実績のある株式会社ユニヴだからこそ実現出来る、安心の薬剤師転職サポートを是非ご体験ください。