薬剤師の転職お役立ちコラム COLUMN
2021/07/15
臨床薬剤師とは?業務内容・平均年収や求められるスキルも紹介
臨床薬剤師は医療先進国のアメリカで生まれた薬剤師の新しい働き方であり、日本でも近年注目されている職種の一つです。薬剤師としてのキャリアプランを考えている人のなかには、臨床薬剤師の仕事に興味を持った方もいるでしょう。
そこで今回は、臨床薬剤師とはどのような職種なのかについて、薬局薬剤師との違いも交えながら詳しく解説します。就職・転職するうえで知っておきたい給与事情や、臨床薬剤師へのなりかたも紹介するため、ぜひ参考にしてください。
1.臨床薬剤師とは|薬局薬剤師との違い
臨床薬剤師は、患者の症状に適した投薬量やタイミングを設計し、どのような効果が得られるのか予測したうえで医師に提案する職種です。日本では認知度が低いものの、アメリカでは医療現場の重要な位置づけとして広く定着しています。
日本の薬剤師は受動的な働き方が主体となっており、代表的な職種である薬局薬剤師は、医師の処方箋に基づく調剤業務や医薬品の飲み合わせを確認することが主な業務です。そのため、患者にアドバイスをしたり、治療に直接関わったりすることはありません。
一方で、臨床薬剤師は医師や看護師と連携しながら、患者の症状を改善するため能動的に行動します。従来の薬剤師と比べて、一歩踏み込んだ領域で業務にあたることが特徴です。
医薬分業により薬剤師の専門性が高まり、さらに近年はそれぞれの職場における業務の特色が明確化しています。とりわけ医療機関で働く薬剤師は、調剤業務より服薬指導や薬歴管理の割合が増えてきました。
「オーダーメイド医療」や「チーム医療」などの新しい医療スタイルが導入されるなか、医薬品の専門家である臨床薬剤師は、今後着実に需要が高まる職種だといえます。
2.臨床薬剤師の業務内容
臨床薬剤師士の主な業務内容は、下記のとおりです。
- 医薬品の情報管理
- 医薬品の効果予測および投与設計
- 患者への服薬指導
日本の臨床薬剤師は歴史が浅く、病院薬剤師との線引きもあいまいな部分が多々ありますが、ゆくゆくはアメリカのように明確に役割が確立されていくでしょう。
以下では、上記の業務内容について詳しく解説します。
2-1.医薬品の情報管理
臨床薬剤師は医薬品についての情報管理を行い、患者へのアドバイスや新しい治療の提案に活かします。具体的には、「それぞれの患者にどのような医薬品を投与しているのか」「効果はあるのか」などを詳しく記録する、いわゆる薬歴管理を行います。
治療の経過において副作用が報告された場合は、今後の安全な投薬のため、データに記録しておかなくてはなりません。医薬品の効果については数値を見るだけではなく、患者に聞き取りをすることも多くあります。患者との対話のなかで「服用しづらい」といった意見があれば、別の医薬品を検討するなどの対処が必要です。
専門病院や大規模総合病院などの薬剤師が多く在籍する医療機関では、病棟業務にあてる時間が長くなります。そのため、診療科カンファレンスや看護師の申し送り会に同席することもあります。
専門病院や大規模総合病院で勤務する場合は、診療科カンファレンスなどで情報交換を行い、自らの業務に積極的に役立てることが大切です。
2-2.医薬品の効果予測および投与設計
患者の年齢や性別、体質などはさまざまです。そのため、臨床薬剤師は過去のデータに基づき、それぞれの患者における医薬品の効果を予測します。
また、最も効果が期待できる投薬のタイミングを見極めて医師に提案することも、業務の一つです。
当然ながら、臨床薬剤師はあらゆる医薬品についての情報を網羅しておかなくてはなりません。薬物動態や依存対象メカニズムなど、幅広い専門知識も必要です。臨床薬剤師は、仕事に就いた後も継続的な学びが欠かせない職種といえます。
2-3.患者への服薬指導
一般的な薬剤師と同じく、患者に対して医薬品の服薬量やタイミングを指導します。また、薬物治療の意義や有効性を、理解してもらうことも大切な業務です。
医薬品は、すぐに効果が現れるものばかりではありません。患者のなかには、症状の回復を待てずに自己判断で服用を中断してしまう人もいます。とくに抗生物質は、症状の改善にかかわらず飲み切ることが原則です。
服用を中断させないためには、医薬品の作用や特性を患者にわかりやすく説明する必要があります。また、治療に前向きになれるよう、患者の気持ちに寄り添うことも大切です。
3.臨床薬剤師の平均年収
下記は、臨床薬剤師と薬剤師の平均年収をまとめた表です。
職種 | 平均年収 |
---|---|
臨床薬剤師 | 約400万〜550万円 |
薬剤師 |
約565万円 |
臨床薬剤師の平均年収は、調剤薬局や保険薬局などで働く薬剤師の収入と比べて、約15万~165万円下回る状況となっています。しかし、臨床薬剤師の平均年収は幅が大きいということが特徴です。
たとえば、国公立の病院は初任給は平均的であるものの、昇給や役職手当などを含めると、年収600万円を超えるケースも珍しくありません。また、民間病院でも地方は臨床薬剤師が少ないため、好条件で働ける傾向にあります。
なお、表内の薬剤師の平均年収は、年齢41.2歳・勤続年数8年である場合のデータです。20代~30代の薬剤師については臨床薬剤師と収入差がないケースも多いため、あくまで目安としてください。
臨床薬剤師の仕事は、収入よりもやりがいを重視する人に向いています。患者の近くで医療に携わることができ、直接感謝されることも少なくありません。また、業務内容が幅広いため、医師や看護師と共に夜勤をしたり、手術に立ち会ったりもします。現状業務にマンネリを感じている薬剤師にも、おすすめできる職種です。
臨床薬剤師の求人を探す際は、収入面以外で得られるメリットにも目を向けたうえで、求職活動を行いましょう。
4.臨床薬剤師になるためには?
臨床薬剤師になるために、薬剤師免許の他に必要な資格や試験はありません。薬歴管理指導業務に携われる医療機関で働き、必要な経験を積んでいくことが現実的な方法です。
前述したとおり臨床薬剤師は高度な専門職であるため、自分の知識・技術レベルを引き上げなくてはなりません。
有効な手段として、薬剤師レジデント制度があります。アメリカの制度を参考に創設された薬剤師レジデント制度は、より質の高い薬剤師を育成するための研修制度であり、日本では2002年に北里大学北里研究所病院で始まりました。
現在は全国35の医療機関に導入され、さらに制度は拡大しています。薬剤師レジデント制度は研修でありながら給与が支払われるため、モチベーションを保ちながら臨床薬剤師を目指せる点も魅力です。
また、臨床薬剤師は専門知識だけではなく、いくつかのスキルが必要となることも認識しておかなくてはなりません。以下では、臨床薬剤師に求められるスキルについて解説します。
4-1.臨床薬剤師に求められるスキル
臨床薬剤師に求められるスキルは、下記のとおりです。
臨床薬剤師に必要なスキル |
---|
|
薬物療法の幅広い知識や技術はもちろん、処方箋を読み取ったうえで薬物動態を計算できる高度な能力が必要です。
また、医療人としてのモラルや、善悪を判断できる能力も求められます。倫理観がなければ、患者の意思もおざなりにされかねません。
さらに、小児から高齢者まで幅広い年齢層の患者と信頼関係が築ける、コミュニケーション能力も必要となります。
まとめ
臨床薬剤師は、今後需要の高まりが期待される職種の一つです。薬局薬剤師との違いは、医師や看護師と連携して患者にとって最善な治療を進める点にあります。業務内容は幅広く、医薬品の情報管理や効果予測、投与設計などさまざまです。
医療現場の重要な一員である臨床薬剤師は、やりがいを求める人に最適な職種となります。ただし、薬物療法についての知識と技術、薬物動態を計算する能力、倫理観などは必須です。円滑に業務を進めるための、コミュニケーション能力も求められます。
臨床薬剤師は高度な専門職であるため、薬歴管理指導業務に携われる医療機関で働くなど、自分の知識・技術レベルを引き上げられる職場を選びましょう。
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