薬剤師の転職お役立ちコラム COLUMN

2022/07/12

在宅療養支援認定薬剤師とは?必要なスキルから取得方法まで

在宅医療が推進されるにしたがって、現在は在宅療養支援認定薬剤師の需要が高まりつつあり、資格取得に励む薬剤師も増えています。しかし、資格の名前を聞いたことがあっても、資格を取得するメリットや資格取得までの流れを知らない方は少なくありません。

当記事では、在宅療養支援認定薬剤師の仕事内容や求められるスキル、資格を取得する方法について紹介します。「薬剤師としての仕事の幅を広げたい」「在宅療養支援認定薬剤師に関心がある」という方は、ぜひ参考にしてください。

1.在宅療養支援認定薬剤師とは?

在宅療養支援認定薬剤師とは、一般社団法人日本在宅薬学会が認定する資格です。2014年秋に第1回の1次試験、翌年1月に2次試験が行われ、以降毎年同じように試験が実施されています。2021年2月には新たに14人が試験に合格し、過去7回を合わせて151人の在宅療養支援認定薬剤師が誕生しました。

在宅療養支援認定薬剤師の主な役割は、在宅療養を必要とする患者に対して、薬剤師の専門性を生かした医療・介護サービスの提供です。在宅療養中の患者に服薬指導をしたり、残薬管理をしたりすることが主な仕事です。医療従事者や介護従事者と連携を取り、チームとしての円滑なサービス提供が求められます。

出典:一般社団法人日本在宅薬学会「在宅療養支援認定薬剤師」

1-1.在宅療養支援認定薬剤師が注目されている理由

在宅医療の推進という背景から、在宅療養支援認定薬剤師が注目されています。在宅医療とは、自力で通院することが困難な患者の自宅へ医師・看護師・薬剤師などが定期的に訪問し、治療・看護・医療サービスを提供することです。

2025年には団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となるため、国の医療費は伸び続けると予想されています。高齢化により伸び続ける医療費を抑制するために、所定の地域では病院のベッド数削減や入院期間の短縮が行われるようになりました。

在宅医療の整備が進められている一方、在宅医療の課題として挙げられる点が「医薬品の管理」です。高齢者の中には複数の病気を抱える人も多く、何種類もの薬を併用しなければならない方は少なくありません。薬の飲み合わせによっては副作用が生じることもあるため、専門家のサポートを求める人もいます。このようなニーズに対応するために、在宅療養支援認定薬剤師が注目されています。

出典:厚生労働省「在宅医療・介護の推進について」

1-2.在宅療養支援認定薬剤師の資格を取得するメリット

在宅療養支援認定薬剤師の資格を取得するメリットは、以下の通りです。

信頼性が高まる 資格を取得するためには、専門的な知識や技術を学び続ける必要があります。日々努力を継続して知識や技術をアップデートすることで、医師や患者からの信頼性が高まります。
スキルアップにつながる 資格取得のために研修や学会に参加することで、最新の薬学情報を習得できます。また、プログラムに沿って学習を進めていくため、幅広い分野を効率的に学ぶことが可能です。
年収が上がる可能性がある 就業先によっては、在宅療養支援認定薬剤師の資格取得を評価し、給料がアップする可能性もあります。資格を取得しておけば、転職をする際にも有利です。

在宅療養支援認定薬剤師の資格を取得するためには、多くのことを学ぶ必要がありますが、長い目で見ると取得しておいて損はないと言えるでしょう。

2.在宅療養支援認定薬剤師に求められるスキル

在宅療養支援認定薬剤師に求められるスキルは、以下の3つです。

薬剤師としての知識と経験

在宅療養支援認定薬剤師は、一人ひとりの患者に合わせた服薬指導や残薬管理が主な仕事です。異なるライフスタイルで暮らす患者に適切なサービスを提供するためには、薬剤師としての豊富な専門知識と経験が必要です。日頃からさまざまな症例を見て目標や課題意識を持ち、主体的に学ぶ姿勢を身につけておくとよいでしょう。

コミュニケーションスキル

在宅療養支援認定薬剤師は、調剤薬局やドラッグストアで働く薬剤師と比べて、一人ひとりの患者と向き合う時間が長くなります。実際に患者の居宅まで出向き、現場で生活に寄り添いながらサービスを提供するため、円滑なコミュニケーションを取ることも大切です。

また、患者だけでなく医師や家族、身近な医療福祉関係者とも連携して情報共有をする必要があるため、柔軟なコミュニケーション能力が求められます。

認定資格の取得

必須のスキルではありませんが、他の認定資格も併せて取得することがおすすめです。在宅療養支援認定薬剤師以外にも、緩和薬物療法認定薬剤師などさまざまな認定資格が存在します。複数の資格を持つことで信頼が高まるだけでなく、患者に対してのサービス向上にもつながります。

3.【STEP別】在宅療養支援認定薬剤師の資格を取得する方法!

在宅療養支援認定薬剤師の資格取得は、大まかに分けると3つのステップがあります。資格を取得したい場合はそれぞれのステップについて詳細を押さえつつ、各ステップにおけるポイントを押さえておきましょう。

ここでは、資格の取得方法についてステップごとに詳細を解説します。

3-1.【STEP1】申請資格を満たしているか確認する

在宅療養支援認定薬剤師の資格を取得したい場合は、以下の申請資格が必要です。

  • 日本国の薬剤師資格を有し3年以上の薬剤師実務経験があること
  • 薬剤師認定制度認証機構により認証された生涯研修認定制度による認定薬剤師、日本病院薬剤師会生涯研修認定薬剤師または日本医療薬学会認定薬剤師であること
  • 在宅業務の実践による5事例の報告を提出すること
  • 日本在宅薬学会主催の学術大会に参加していること
  • バイタルサイン講習会を受講していること

引用:一般社団法人日本在宅薬学会「新規申請手続き方法」

上記の取得条件を満たした上で、書類選考・筆記試験・面接を受けます。すべてに合格して登録料を納付すれば、在宅療養支援認定薬剤師として登録されます。

3-2.【STEP2】単位を取得する

在宅療養支援認定薬剤師を取得する上では、3年以内に合計40単位以上を取得する必要があります。単位の内訳は下記の通りです。

日本在宅薬学会指定の講演または講義
シンポジウム
ワークショップ
e-ラーニング
35単位 3年以内に合計40単位以上取得
日本在宅薬学会
学術大会参加 参加証
受講証明書の提示
日本在宅薬学会
バイタルサイン講習会 修了証
在宅業務の実践報告 5単位

認定薬剤師研修講座(計35単位以上を取得)は、薬剤師認定制度認証機構(CPC)との単位互換が可能です。ただし、単位はいずれかのみに有効となり、単位互換する研修単位は15単位以内となります。

出典:一般社団法人日本在宅薬学会「新規申請手続き方法」

3-3.【STEP3】試験を受ける

試験を受ける際は、下記の必要書類を準備しましょう。

  • 在宅療養支援認定薬剤師認定申請書
  • 認定薬剤師研修手帳(受講証明書が添付されているもの:合計35単位以上)
  • 薬剤師免許証の写し
  • 認定薬剤師証の写し
  • 日本在宅薬学会が主催した学術大会参加証の写し
  • バイタルサイン講習会修了証の写し
  • 抱負(指定の用紙に記入する)
  • 事例報告書5事例(指定の用紙に記入する)
  • 認定審査料(振込証明書の写し)

上記9点をそろえた上で、試験会場へと向かいましょう。試験当日は会場にて本人確認を行った後で試験を開始します。試験が終了し、試験終了レポートを受け取ったら終了です。なお、認定薬剤師証の写しは、日本医療薬学会認定薬剤師または日本病院薬剤師会生涯研修認定薬剤師など、1つの用意で構いません。

在宅療養支援認定薬剤師の認定期間は3年の更新制となっています。3年ごとに更新料10,000円が必要となるため、あらかじめ用意しておきましょう。

出典:一般社団法人日本在宅薬学会「新規申請手続き方法」

まとめ

在宅療養支援認定薬剤師は、今後も需要の高まりが期待できる資格です。薬剤師としてのキャリアアップにつながるだけでなく、資格を取得することで患者からの信頼性も高まります。薬剤師としての幅を広げたい方は、資格取得に挑戦してみることも1つの方法です。

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