薬剤師の転職お役立ちコラム COLUMN
2021/11/16
薬剤師がクレームを受けたときはどう対処する?事前の予防策も
薬剤師として働いていると、お客さんから苦情を言われたり、不満の気持ちを向けられたりする場面があるでしょう。お客さんからのクレームが原因で、自信の喪失につながる薬剤師も少なくありません。
前向きな気持ちで薬剤師の仕事を続けるためには、クレームを受けた場合の対応スキルを身につけることが必須です。
今回は、薬剤師がクレームを受ける主な原因と、具体的な対応方法を解説します。クレーム対応で言ってはならない言葉や予防策にも触れるため、クレームによる心身の負担を軽減したい薬剤師の人は、ぜひ参考にしてください。
1.薬剤師がクレームを受ける主な原因3選
接客業務が含まれる調剤薬局やドラッグストアで働く薬剤師は、接客業に分類されます。接客業は、他の業種に比べてお客さんからクレームを受けることが多い傾向です。
お客さんからのクレームを減らしたい場合、まずはお客さんの立場になり、クレームを言いたくなる心理状態をイメージしてみましょう。
ここでは、薬剤師がクレームを受ける主な原因を3つ解説します。
1-1.薬剤師の説明が不足している
薬剤師へのクレームにつながる原因の1つが、薬剤師の説明不足です。
薬を受け取るお客さんの多くは、処方せんや処方薬の知識がありません。薬の飲み方や使用方法などの説明が不十分だと、薬剤師に不満を抱きやすくなります。
お客さんは薬に対する不安や疑問を持っているかどうか確認し、相談や質問にわかりやすく答え、正しい情報を丁寧に伝えることが大切です。
1-2.待ち時間が長くなっている
薬を受け取るまでの待ち時間が長いことが、クレームにつながる場合もあります。
医療機関を受診する人が増える季節の変わり目や感染症の流行時期は、調剤薬局やドラッグストアの待ち時間が長くなる傾向です。混雑している状況と「時間がない」「体調が悪い」などの状況が重なると、クレームに発展しやすくなります。
また、薬の内容によりお客さんの順番が前後した場合に、クレームが発生することも珍しくありません。待ち時間の目安を示したり、待ち時間が長くなる理由や順番が前後する理由を掲示したりなど、待つことへのネガティブな感情をお客さんに与えない工夫も必要です。
1-3.料金が高くなっている
薬の料金が高いことについて、クレームを伝えに来るお客さんも少なくありません。
過去に他の調剤薬局やドラッグストアを利用したことがあるお客さんのなかには、「同じ薬にもかかわらず料金が違う」と疑問を持つ人もいます。
調剤基本料・基準薬局加算・服薬指導加算などの料金基準は、薬剤師の知識がない人には理解が難しい部分です。お客さんが不信感を抱かないよう、料金システムをわかりやすく説明できるようにしておきましょう。
2.【必見】薬剤師がクレームを受けたときの対応方法
薬剤師がクレームを受けた場合、適切に対応しなければお客さんの怒りを増大させてしまう可能性があります。お客さんからクレームを受けた場合は、慌てずに「謝罪」「傾聴」「事実確認」の順で対応することが重要です。
ここでは、薬剤師がクレームを受けた場合の対応方法について解説します。
2-1.(1)まずは謝罪する
お客さんからクレームを受けたとき、クレームに対して言い返すことは厳禁です。まずはクレームの初期対応として、お客さんに謝罪の気持ちを伝えましょう。
ただし、初期謝罪はあくまで「不愉快な気持ちにさせてしまったこと」「不信感を抱かせてしまったこと」に対する謝罪です。クレームの内容に対しての謝罪ではありません。クレームに対して思うことがあったとしても、誠意のある態度を示してお客さんの怒りの増大を防ぐことが先決です。
2-2.(2)お客さんの話を傾聴する
お客さんへ謝罪した後は、お客さんの話を傾聴しましょう。
傾聴とは、「相手の言葉に耳を傾けて心から聴く」ことを意味します。単に受動的にお客さんの声を「聞く」のではなく、積極的に「聴く」ことが大切です。お客さんの言葉にオウム返しや大きなリアクションをせず、話に耳を傾けていることが伝わる聴き方を意識しましょう。
話を傾聴するうちに、お客さんの気持ちが少しずつ落ち着くこともあります。ただし、落ち着いたからといって自分の言い分を伝えたり反論したりすることは逆効果です。
2-3.(3)事実確認をする
お客さんの気持ちが落ち着いたら、はじめて薬剤師側から事実確認につながる質問をお客さんに投げかけます。お客さんが冷静に会話できるよう、会話が柔らかくなるクッション言葉を上手く使いましょう。
主なクッション言葉は下記のとおりです。
- ・恐れ入りますが
- ・申し訳ありませんが
- ・失礼ですが
- ・差し支えなければ
- ・ご迷惑でなければ
クレームに至った経緯や要求などを聞き取りながら状況を整理することで、薬剤師が取るべき次の行動が明確となります。
2-4.(4)解決策を提示する
クレームに至った経緯や内容を把握したうえで、お客さんへ解決策を提示しましょう。具体的な解決策の提示例は、次のとおりです。
- ・料金が高くなった:ジェネリック医薬品への変更を提示する
- ・待ち時間が長い:再来局をすすめる、空いている時間帯を提示する
解決策の提示が難しい場合は、上司や責任者の指示を仰ぎましょう。
問題解決後は、お客さんにクレームに対する感謝の気持ちを示すことも大切です。感謝の気持ちを伝えると、お客さんの承認欲求を満たすことにつながります。お客さんからのクレームは、より良いサービス提供を行うための意見や改善策である点を忘れないようにしましょう。
3.クレーム対応で言ってはいけない言葉とは?
クレーム対応の際には、言ってはならない言葉があります。上手く対応できていたにもかかわらず、不用意な言葉で事態を悪化させる場合があるため、言葉遣いには注意しましょう。
クレーム対応で言ってはならない言葉は以下のとおりです。
〇4D言葉
次のDから始まる4つの言葉は、否定や言い訳のニュアンスが含まれます。
- ・でも
- ・だって
- ・どうせ
- ・ですが
普段から口癖となっている人は、つい言ってしまわないように注意しましょう。
〇絶対
「絶対」は、相手に強い印象を与える言葉です。クレームに対して「絶対にあり得ません」と答えた場合、お客さんは激しく否定されたと感じます。また、「絶対に大丈夫です」と答えた場合、万が一実現できなければ約束を破ったと捉えられかねません。
〇否定を表すフレーズ
丁寧な話し方を意識した場合でも、否定を表すフレーズが含まれると相手はネガティブな気持ちを抱きます。否定を表す主なフレーズは下記のとおりです。
- ・お言葉ですが
- ・判断できません
- ・そうはおっしゃられましても
- ・何度も申し上げているとおり
相手の話をさえぎる場合に使われることが多いフレーズであるため、クレーム対応には適しません。
4.クレームに対する事前の予防策
お客さんからのクレームは、上手く対処すると円滑な解決が可能です。しかし、クレーム対応は精神的な負担も大きく、時間や労力もかかります。クレームを事前に防ぐために、できる範囲で予防策を講じておきましょう。
薬剤師がお客さんからのクレームを防ぐ対策は、以下のとおりです。
〇接客マナーの基準を決める
目指すべき接客マナーのレベルを決めると、スタッフの意識を共有しやすくなります。クレームに対して薬剤師が適切に対応できるように、クレーム対応マニュアルを作成したり研修会を実施したりすることも効果的です。
〇サポート体制を構築する
クレーム対応は1人では難しい場合もあります。1人で対応が難しい場合は、「管理薬剤師や薬局長に連絡する」「本部や弁護士と連絡を取り合う」のように、組織的な対応が必要です。問題の早期解決を目指すために、ノウハウやチームでサポートできる体制を構築しておきましょう。
まとめ
薬剤師がお客さんからクレームを受ける主な理由は、「説明不足」「待ち時間の長さ」「料金への不満」の3つです。
お客さんからクレームを受けた場合は、「傾聴」「事実確認」「解決策の提示」の流れで解決を目指します。言い訳や否定をせず、相手に寄り添った対応を心がけましょう。
クレームを未然に防ぐためには、接客マナーの基準を決めてサポート体制を構築することがポイントです。クレーム対応のコツや予防策を実践しながら、心身の負担を軽減できる働き方を実現しましょう。
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