薬剤師の転職お役立ちコラム COLUMN

2022/12/16

薬剤師に求められる役割とスキル|勤務場所別の業務内容も解説

薬のスペシャリストとして医療や健康・衛生管理の一端を担う薬剤師は、これからの超高齢化社会において大きな期待を寄せられる存在の1つです。

現在国内では医療のICT化や地域包括ケアシステムの構築、健康寿命を伸ばすための取り組みなどが進められています。このような変化にともなって薬剤師の役割も変わっていき、新しい形で活躍するチャンスが増えるでしょう。

この記事では、勤務場所ごとで求められる薬剤師の役割と、求められるスキルなどについて解説します。

1.薬剤師に求められるスキルとは?

薬剤師は、薬の専門家として医療に携わる仕事の1つです。ただ薬を調剤・供給し患者さんに渡すだけではなく、患者さん一人ひとりにアドバイスし医師と患者さんの橋渡し役となって多くの人の健康を支えます。

また、新薬の製造開発や違法薬物の取り締まりなどに関わる薬剤師も少なくありません。

薬剤師に求められる主なスキルは、下記の通りです。

・コミュニケーションスキル

薬を必要とする患者さんは、けがや病気のために不安を抱えていることが少なくありません。薬剤師として患者さんと細やかにコミュニケーションを取ると、患者さんの不安をやわらげることができます。

対話を通して患者さんの体質やライフスタイルを把握し、一人ひとりに合った服薬指導を行うことは、薬の効果を高め副作用のリスクを抑えるために重要です。

・薬に関する豊富な知識

使い方によっては命に関わる薬を正しく扱うためには、薬に関する深い知識が欠かせません。専門知識とコミュニケーションスキルを伸ばすことで、患者さんへの分かりやすい説明が可能となります。

現在の医療技術は日進月歩であり、新しい医学的発見や新薬の登場によってそれまでの常識が覆ることもしばしばです。そのため、薬剤師には医療技術や製薬に関する最新情報に対する敏感さが求められます。

・危険を察知する能力

安全と言われる薬でも、副作用が生じる確率はゼロではありません。特に、患者さんが高齢者・小児・妊婦などの場合は細心の注意が必要です。患者さんの様子を細かくチェックし、薬の使用にともなうリスクをできる限り避けることも、薬剤師に必要なスキルと言えます。

2.【勤務場所別】薬剤師が求められる役割と主な業務内容

薬剤師の仕事内容は幅広く、チーム医療の一員として調剤や医薬品の供給を責任持って行う業務を担当します。また、薬局などに来る患者さんとコミュニケーションを取り、健康づくりをサポートする業務を担当することも、薬剤師の重要な仕事です。

薬剤師法に定められた薬剤師の役割・任務は下記のように定められています。

(薬剤師の任務)

第一条 薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。

引用:e-GOV法令検索「薬剤師法」/引用日2022/10/14

なお、薬剤師の詳細な役割や業務内容は、勤務場所ごとにさまざまです。以下では、薬剤師の役割や業務内容を勤務場所別に解説します。

2-1.【病院】チーム医療における取りまとめ

チーム医療とは、医師・看護師・リハビリ分野の専門家などと連携して患者さんに合わせたケアを提供する医療スタイルです。薬剤師は医薬品のプロとしてチーム医療に参画し、薬物治療を主導します。

病院で活躍する薬剤師が担当する業務内容は、調剤業務・病棟業務の2種類です。

調剤業務
  • ・入院中の患者さんや外来の患者さんへの処方薬を調剤
病棟業務
  • ・入院中の患者さんに対し、カルテ・検査・治療データに基づいた服薬指導を実施
  • ・患者さんの服薬状況を確認し、医師や看護師などへの情報共有やよりよい処方薬の提案も担当

病院によっては薬剤師を、救急医療・緩和ケア・NST(栄養サポートチーム)などの現場に配属することもあります。病院で働く薬剤師はさまざまな分野の専門的知識を磨き、スキルアップを図ることが可能です。

2-2.【薬局】患者さんの状態に応じた改善・対応策の提案

薬局の薬剤師は調剤業務・相談対応業務などを通じて、患者さん一人ひとりの状態に合わせた改善・対応策の提案を行います。ただし、薬局の種類によってはより独自性の高い業務を担当するケースもあるため、自分自身の責任範囲や存在意義を把握し、責任持った対応を取ることが必要です。

以下では、薬局の種類別に薬剤師の求められる役割・主な仕事内容を解説します。

門前薬局

門前薬局(総合病院やクリニックの近くの調剤薬局)で活躍する薬剤師の主な業務は、処方箋に沿った医薬品の供給・調剤・服薬指導・疑義照会です。服薬指導とは薬物療法の安全性や有効性を高める目的で患者さんとやり取りしつつ、効能や副作用のリスクなどを説明することです。疑義照会とは、処方箋の内容を精査し、不明点や疑問点がある場合には医師に問い合わせることを指します。

患者さんの服用している医薬品・薬アレルギー・身体の状況(持病の有無や妊娠など)によっては処方が変更されることも、少なくはありません。薬剤師は患者さんの薬歴や心身の状況を正しく把握し、安心して薬物療法にあたれるようにサポートする役割を担います。

調剤薬局併設型ドラッグストア

調剤薬局併設型ドラッグストアで活躍する薬剤師の主な業務は、調剤業務およびOTC医薬品(処方箋なしで買える市販薬)などに関する相談対応業務です。他のスタッフが忙しいときには薬剤師も、接客販売や品出しなどを行います。

OTC医薬品は比較的効果のマイルドな商品が多いとは言え、お客さん自身が体質・症状に合う商品を見極めることは、簡単と言えません。そのため、薬剤師はOTC医薬品に関する知識も磨き、症状の緩和や疾病予防に役立つ商品選びをサポートする必要があります。

在宅・施設調剤型薬局

在宅・施設調剤型薬局は、在宅医療の患者さんや介護施設入居者への調剤を行う薬局です。薬剤師は患者さんの自宅や介護施設へ医薬品を届けて服薬状況・体調などを確認し、医師やケアマネジャーに報告を行います。

高齢の患者さんは複数の薬を併用しているもしくは、認知症や嚥下障害を抱えているケースもあります。そのため在宅・施設調剤型薬局で働く薬剤師は、心身の状態などに応じて調剤方法を工夫したり関係者と連絡を取り合ったりすることが大切です。

2-3.【企業・行政】新薬の開発・違法薬物の取り締まり

薬剤師の中には調剤や服薬指導以外の仕事を担当し、企業・行政で活躍する人もいます。企業・行政機関で働く薬剤師の主な業務と役割は、以下の通りです。

・製薬会社

製薬会社で活躍する薬剤師の主な業務は、管理薬剤師・研究開発・MR(医療情報担当者)の3種類です。

管理薬剤師業務 本社や支社で医薬品の在庫管理や行政対応を担当したり、工場で従業員を監督し、品質管理を行ったりする業務
研究開発業務 新薬を開発するための基礎、応用研究や臨床実験を行う業務
MR
(医療情報担当者)業務
製薬会社の営業職として病院や薬局を訪問し、自社商品の情報提供や医師などからのヒアリングを行う業務

製薬会社の薬剤師は新薬の開発や医薬品の安全・安定供給分野において、重要な役割を果たします。また、製薬会社の薬剤師は医療業界の最新知識や学術論文に触れる機会も多く、積極的なスキルアップを図ることが可能です。

・行政機関

行政機関の薬剤師は国家公務員資格もしくは地方公務員資格を取得した上で就職し、「麻薬取締官」「薬事監視員」「食品衛生監視員」などとして働きます。

麻薬取締官 地方厚生局に所属し、薬物犯罪の取り締まり・危険ドラッグ使用防止の啓発運動などを担当する職種
薬事監視員 自治体の薬務課、保健所、地方厚生局などで薬局や医薬品メーカーの法令違反を監視し、必要に応じて指導する職種
食品衛生監視員 保健所や食品衛生検査所などで食品や医薬品の検査・調査を担当し、飲食店や製造業者に衛生管理方法を指導したり、空港の検疫所で輸入食品の安全監視を行ったりする職種

上記の他、行政機関で働く薬剤師は環境衛生の仕事に関わり、美容室や宿泊施設の衛生状況監視や指導を担当するケースもあります。

2-4.【スポーツ業界】スポーツファーマシストとして活動

スポーツ業界で活躍する薬剤師はスポーツファーマシストとして、ドーピングからアスリートを守る仕事を担当します。ドーピングとは、競技能力を高める目的で禁止成分を含むサプリメントや医薬品を服用する行為です。

公正さを重視するアスリートの世界においてドーピングは重大なルール違反とみなされて、選手生命を絶たれてしまう可能性があります。スポーツファーマシストの仕事は「アスリートが服用する医薬品・サプリメントなどに禁止成分が含まれていないか」の相談に乗り、ドーピングを阻止することです。

また、スポーツファーマシストは小中学校や地域におけるアンチドーピング教育・指導者に対する情報提供や啓発活動を担当し、学生や地域住民の活動を支えることもあります。

3.災害時にも活躍!薬剤師の役割・活動内容とは?

薬剤師は医療従事者による災害サポートチームに参画し、服用していた医薬品の割り出し・医師に対する処方の提案・支援物資として届いた医薬品の在庫管理などを担当します。避難所で生活する人の体調によっては医薬品を配布することも、薬剤師の重要な役割です。

さらに、薬剤師は災害発生時に、以下の活動を担当することもあります。

  • マスク、消毒キットなどの管理や配布
  • トイレの消毒、衛生管理
  • 井戸水の水質調査
  • 避難所の空気中二酸化炭素検査
  • 避難所の照度検査

また、薬剤師には近年導入が進んでいるモバイルファーマシーに乗り、災害支援にあたる役割も期待されます。

3-1.モバイルファーマシーとは?

モバイルファーマシーとは、薬局業務を行うための設備を備えた改造車です。2018年11月時点では、大規模な災害への備え・健康イベントにおける展示目的で、全国各地に13台のモバイルファーマシーが待機しています。

出典:日本薬剤師会「薬剤師の役割」

モバイルファーマシーには多くの場合、以下の機能・装備が備えられており、薬局としての機能を自立的に果たすことが可能です。

  • 調剤台
  • 医薬品棚
  • 小型分包機
  • 薬品保管庫
  • 情報処理用コンピューター
  • デジタル無線機
  • 大型バッテリー
  • 自家発電機
  • 通信衛星アンテナ

モバイルファーマシーには、洗面台・トイレ・温水シャワー・ベッドなどの基本的な生活設備も備えられています。そのため、薬剤師を含む医療関係者の支援チームはモバイルファーマシーを活動拠点として、長期的な災害サポートを行うことが可能です。

4.薬剤師にかかる期待・役割は大きい

医療技術が発展し、かつ高齢化社会に突入している現代日本において、薬剤師は幅広い分野での活躍が期待されています。

地域医療への貢献

厚生労働省が推進するかかりつけ薬剤師・薬局は、地域包括ケアシステムに欠かせない要素の1つです。医療・介護専門職と連携しカルテ・服薬履歴を一元管理することで、重複投薬や医療費の無駄を防ぎやすくなります。

近年増えている健康サポート薬局は、薬関連だけではなくさまざまな健康相談に対応できる薬局です。健康サポート薬局では健康維持に関するイベント・セミナーなどを開催し、薬剤師と地域住民の交流を通して健康づくりに取り組みます。

正しい情報の提供

薬や医療の専門知識を持たない人が安易に薬を使うと、思わぬ弊害が生じることがあります。一方、中途半端な情報が原因で薬を怖がりすぎる人も少なくありません。

薬剤師には、薬の専門家として正しい情報の提供を行う責任があります。事務的な説明ではなく丁寧なコミュニケーションを通じて患者さんの疑問や不安を解消することで、患者さんは安心して薬を使い健康を保てます。

4-1.近年重要性が増している「かかりつけ薬剤師」とは?

2016年にかかりつけ薬剤師制度が開始され、地域医療における薬剤師の重要性が高まっています。かかりつけ薬剤師とはかかりつけ薬局に所属し、医学に関する専門知識をもとに患者さんの処方薬・利用している健康食品などの情報を一元的に管理する薬剤師です。

かかりつけ薬剤師は医療チームの一員として服薬治療を見守り、処方医へのフィードバックも担当します。高齢化社会においては自宅療養する高齢者を訪問して残薬をチェックしたり、健康相談に乗ったりすることも、かかりつけ薬剤師が担う役割です。

かかりつけ薬剤師として患者さんをサポートするためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 薬剤師として薬局での勤務経験が3年以上
  • その薬局に週32時間以上勤め、かつ1年以上在籍している
  • 医療に関する地域活動に参画している
  • 薬剤師研修認定等を取得している

引用:日本薬剤師会「かかりつけ薬剤師・薬局とは?」/引用日2022/10/14

かかりつけ薬剤師になると会計時に「かかりつけ薬剤師指導料」「かかりつけ薬剤師包括管理料」を加算できるため、薬局の報酬アップが見込まれます。また、かかりつけ薬剤師の経験を積むと健康管理や服薬指導の専門性が養われ、地域包括ケアシステムを支える薬剤師として、キャリアアップを図ることも可能です。

5.求人は薬剤師専門の求人サイトで探すことがおすすめ!

薬剤師として就職・転職したい場合は、薬剤師専門求人サイトや各種相談会などを活用すると効率よく情報収集できます。ファーネットキャリアでは、薬剤師業界に豊富な知識を持つコーディネーターが、求職者一人ひとりにあった転職先を洗い出して紹介します。

コーディネーターが採用面接に同行し、より好条件での採用を目指して紹介先の担当者と交渉することもファーネットキャリアの特徴です。面接前のアドバイスも提供しているため、転職に不安がある人や緊張しやすい人も安心して面接に臨むことができます。

まとめ

薬剤師となるためには、薬に関する深い知識に加えて高いコミュニケーションスキルと危機察知・回避能力が必要です。これらのスキルを高めることで、患者さんに寄り添った丁寧で正確な服薬指導が可能となります。

薬剤師の勤務先としてもっとも多いのは薬局ですが、医療機関・医薬品関連企業・行政機関などで活躍する薬剤師も少なくありません。新薬開発や地域医療が進むこれからの時代において、薬剤師のあり方はますます多様化します。

職場で重宝される薬剤師となるために、勤務場所ごとの特徴を理解して、日々スキルを磨いていきましょう。

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