薬剤師の転職お役立ちコラム COLUMN

2022/10/03

漢方薬剤師とは?働くメリット・デメリットからなるための方法まで!

薬剤師として活躍する人の中には、漢方薬や生薬を主に扱う「漢方薬剤師」について見聞きしたことがある人もいるのではないでしょうか。漢方薬剤師は通常の薬剤師と異なる役割が求められており、需要も高まっています。

当記事では、漢方薬剤師の業務内容や通常の薬剤師との違い、漢方薬剤師として働くメリット・デメリットなどを解説します。漢方薬剤師になるための方法や、求められるスキル・心構えも併せて確認し、薬剤師としてのスキルアップ・キャリアアップを図る際の参考にしてください。

1.漢方薬剤師とは?

漢方薬剤師とは、「漢方薬や生薬の専門知識や能力が備わっている」と認められた薬剤師のことです。正式名称は「漢方薬・生薬認定薬剤師」と呼ばれます。服用する人の体質や状況を判断しつつ漢方薬を処方する必要があるため、専門性が求められる仕事です。

出典:公共財団法人 日本薬剤師研修センター「漢方薬・生薬認定薬剤師制度とは」

漢方薬や生薬は西洋薬と処方目的が異なるため、それぞれの特徴をしっかり理解しておきましょう。

処方の目的
漢方薬・生薬
  • 自然由来の原材料を使用
  • 体調を整えたりサポートしたりする
西洋薬
  • ほとんどは人工的に化学合成される
  • 病気や症状に対してピンポイントで効果を狙う

漢方薬や生薬には複数の成分が含まれており、西洋薬に比べてさまざまな症状を幅広くカバーできる点が大きな魅力です。国内では健康を意識する人が増えたこともあり、漢方薬剤師への需要が年々高まっています。

1-1.漢方薬剤師と通常の薬剤師の違い

病院や調剤薬局で勤務する通常の薬剤師は、医師が発行した処方せんに基づいて調剤業務を行います。処方医師の方針や診療科目にもよりますが、症状の原因にピンポイントに効くことが期待される西洋薬を扱うケースが多く、漢方薬を取り扱う機会はあまり多くありません。

一方、漢方薬局などで働く漢方薬剤師の場合、患者さんのカウンセリングを行い、聞き取った症状や体調・体質などの情報から薬剤師本人が適切な漢方薬を選定します。診断から処方内容の決定、調剤、服用の説明までのすべての対応を行う点は、通常の薬剤師と大きく異なる点と言えるでしょう。

1-2.漢方薬剤師の仕事内容

漢方薬局で働く漢方薬剤師の主な仕事は、下記の2つです。

  • 患者さんのカウンセリング
  • 漢方薬や生薬の調剤

漢方薬局で漢方薬剤師として働く場合、患者さんの体調などに合った漢方薬や生薬を処方・調剤する必要があります。場合によっては、カウンセリング業務だけで1時間以上かかることもあるでしょう。

また、漢方薬局は調剤薬局に比べて、取り扱う漢方薬の種類が多いことが特徴です。

漢方薬局
  • エキス剤だけでなく煎じ薬も取り扱う
  • 一般用漢方製剤だけで294処方
調剤薬局
  • ほとんどがエキス剤
  • 取り扱う漢方薬が少なく処方がパターン化

勤務する薬局によって取り扱う漢方薬の数や種類は異なるため、患者さんをカウンセリングして最適な漢方薬を処方しなければなりません。多くの漢方薬局では、情報提供や服薬指導など十分な説明が必要な「要指導医薬品」と「第一類医薬品」は、患者さんの手が届かない場所に陳列されています。

2.漢方薬剤師として働くメリット・デメリット

近年は健康意識が高まっていることもあり、体全体のバランスを考えて処方される漢方薬が一層の注目を集めています。漢方薬の注目度に比例し、漢方薬局・漢方薬剤師の需要も高まることが想定されるため、漢方薬剤師として働くキャリアパスも十分に考えられるでしょう。

ここでは、漢方薬剤師として働く場合のメリット・デメリットについて解説します。メリット・デメリットの両方をふまえた上で、薬剤師としてのキャリアプランを考えましょう。

2-1.【メリット1】専門的な知識が身につく

漢方薬は種類が多く、患者さんに合った処方を行うために高度な専門知識が求められます。専門的な知識やスキルを身につける努力は必要ですが、一般的な薬剤師が簡単に関われる分野ではないため、薬剤師としての専門性・独自性を高めることが可能です。

また、漢方薬剤師の関連資格を取得したり、漢方薬剤師としてのキャリアを積んだりすることにより、漢方薬に関する専門的な知識・スキルを培えます。服薬指導のスキルも向上するため、自信を持って仕事に取り組めるようになるでしょう。

2-2.【メリット2】転職で有利に働く

漢方薬剤師は、専門性が高く将来的なニーズの高まりも期待されています。今後、漢方薬局以外でも漢方の取扱いが増える可能性もあるため、調剤薬局やドラッグストアなどの職場への転職時に有利となるでしょう。

また、漢方薬剤師として長く経験を積めば、漢方薬局を独立開業することも可能です。専門性・独自性を生かした働き方ができることも、漢方薬剤師のメリットの1つと言えます。

2-3.【デメリット1】求人が少ない

漢方薬に関する専門的な知識・スキルを持つ薬剤師の場合、就職する薬局・医療機関などの種別を問わなければ、スムーズに転職活動を進められるでしょう。一方、漢方薬局は店舗数が少なく、漢方薬剤師の求人情報や採用数もまだ豊富とは言えない状態です。

漢方薬局への就職を希望している人は薬剤師向けの求人サイトを活用しつつ、地域の漢方薬局が参加する勉強会や漢方セミナー・漢方講座などに出席しましょう。勉強会などで専門的知識を身につけながら漢方薬局とのつながりを作り、求人が出た際に声を掛けてもらえる関係性を築くことが重要です。

2-4.【デメリット2】収入が低くなる可能性がある

就職先にもよりますが、漢方薬局で出される漢方薬の多くは保険が適用されないこともあり、一般的な薬剤師よりも収入がやや低くなる可能性があります。薬剤師の平均年収が約581万円である一方、漢方薬剤師の給料相場は年収約400万~450万円ほどであることに留意しましょう。

出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」

とはいえ、漢方薬剤師の求人の中には、年収500万~600万円など高待遇な就職先もあります。スキルアップを図れば収入アップが期待できるため、収入や雇用形態、福利厚生などを考慮した上で自分に合った就職先を選択しましょう。

3.漢方薬剤師になるための方法

漢方薬剤師として働くためには国家資格である薬剤師資格が必要ですが、必須とされる資格はありません。一方で、漢方薬に関連する資格があれば専門知識・スキルを有することを証明できるため、患者さんや医療従事者からの信頼性がアップし、就職や転職の際にも評価されます。

ここでは、漢方薬剤師になるための方法を関連資格と併せて紹介します。

3-1.漢方薬・生薬認定薬剤師制度を取得する

漢方薬・生薬認定薬剤師とは、「医療用漢方や生薬に関する専門的な知識・スキル・適性を持つ」と認定された薬剤師のことを指します。資格取得の流れは下記の通りです。

【「漢方薬・生薬認定薬剤師」認定取得までの流れ】

取得条件 薬剤師免許(日本)の所持者
取得までの流れ
  • (1)漢方薬・生薬研修会(集合座学研修・ビデオ集合研修・インターネット研修のいずれか)に参加し課程を修了する
  • (2)受講完了後に試問を受けて合格する
  • (3)漢方薬・生薬認定薬剤師の認定申請を行い、登録する
試問内容
  • 漢方薬と生薬に関する基礎知識
  • 漢方薬の歴史や薬用植物栽培に関する知識
  • 漢方処方・服用方法の注意事項 など

日本生薬学会の漢方薬・研修会は講義形式(9回)と薬用植物園実習(1回)から構成されており、資格取得にかかる費用は7万~9万円程度とされています。3年ごとに研修参加や所定の単位取得を行い、認定証を更新する必要があることも押さえておきましょう。

出典:公共財団法人 日本薬剤師研修センター「<漢方薬・生薬認定薬剤師制度の参加から認定まで>」

3-2.漢方アドバイザーの資格を取得する

漢方アドバイザーとは、漢方薬の基礎知識や服用の方法といった知識を幅広く身につけられる資格です。ここでは、一般社団法人日本技能開発協会が認定を行っている漢方アドバイザー資格について、取得の条件や流れを確認しましょう。

【「漢方アドバイザー」取得までの流れ】

取得条件 特になし(薬剤師ではなくても受験可能)
取得までの流れ
  • (1)受験申込後に届く所定のテキストや問題集を使って学習する
  • (2)認定試験を受験する(在宅・筆記試験)
  • (3)認定証を受け取る

出典:日本技能開発協会「漢方アドバイザー認定資格試験とは」

3-3.漢方メインの薬局で勤務する

漢方薬剤師を目指す場合は、漢方薬・生薬メインの薬局で働くこともおすすめです。一般的な調剤薬局では取り扱う漢方薬が限られることが多く、数多くある漢方薬の知識を身につけるためには時間がかかります。

一方、漢方薬を豊富に取り扱う薬局であれば、働きながら必要な知識を覚えられる上、キャリアを積むことも可能です。中医師が在籍する薬局であれば、中医学に関する知識も学べます。

4.漢方薬剤師に必要なスキル・心構え

漢方薬剤師として活躍するためには、少なくとも下記の3つのスキル・心構えが必要となります。

  • 患者さんに寄り添えるコミュニケーション能力
  • 西洋医学や中医学の知識
  • 常に勉強する姿勢

ここでは、漢方薬剤師に求められる上記のスキルや心構えについて詳しく解説します。

4-1.患者さんに寄り添えるコミュニケーション能力

漢方薬剤師は、患者さんの症状や体調、悩み、体質を考慮した上で適切な漢方薬の処方を行います。漢方相談で詳しい話を聞くためにも、患者さんに寄り添ったカウンセリングを心がけましょう。

「小さなことも相談できる」「長期間付き合っていける」と患者さんに思ってもらえるよう、患者さんとの信頼関係を構築するスキルを高めることが重要です。

4-2.西洋医学や中医学の知識

漢方薬は中医学(中国で発達した医学)をベースに発展したものであるため、漢方薬剤師として中医学を十分に理解することは非常に重要です。

また、患者さんにとって漢方の処方が適切かどうかを判断するために、西洋医学や西洋薬の知識を身につけることもおすすめします。薬剤師としての基本的な知識を深めつつ、漢方に関する専門的スキルを高めることを心がけましょう。

4-3.常に勉強する姿勢

漢方薬剤師には常に勉強する姿勢が求められます。漢方に関する知識を学ぶためには、積極的に漢方の勉強会に参加しましょう。

勉強会に参加することで、患者さんからの相談に適切なアドバイスができるようになるなど、勉強会に参加するメリットは豊富です。勉強会やセミナーの開催情報は、漢方薬を取り扱う会社や団体のホームページなどをチェックしてみましょう。

漢方薬局が行う勉強会は、初心者向けに行われることが多いと言えます。さらに深く漢方薬について学びたい人は、製薬メーカーや大学などで開催される勉強会に参加することも1つの方法です。

まとめ

漢方薬剤師とは、漢方薬や生薬に関する専門的な知識・スキルを持つ薬剤師であり、カウンセリングから漢方薬の処方・調剤・販売までを一元的に担当します。専門性・独自性を高められるため転職を有利に進められる場合もありますが、求人数が豊富ではないことも留意しましょう。

漢方薬剤師に必要な資格は薬剤師国家資格のみですが、漢方薬・生薬認定薬剤師などの資格を取得することでより専門性を高められます。薬剤師としてのスキルアップを目指したい人にとって、漢方薬剤師はおすすめできる資格です。

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