薬剤師の転職お役立ちコラム COLUMN

2022/06/16

薬剤師が青年海外協力隊に参加するメリットは？活動する際の注意点も

薬剤師として日々働いていると、国内にとどまらず国際的な経験を積みたいと考える人もいるのではないでしょうか。技術や知識を持った人を開発途上国に派遣する「青年海外協力隊」では、薬剤師の資格を持つ人を募集しています。青年海外協力隊に参加することで、薬剤師はさまざまなメリットを享受することが可能です。

当記事では、青年海外協力隊の概要に加えて、薬剤師が青年海外協力隊に参加するメリットなどを解説します。活動する際の注意点や、応募から派遣までの流れも把握した上で、参加するかどうかを検討しましょう。

青年海外協力隊とは？
1. 青年海外協力隊の薬剤師募集の詳細
薬剤師が青年海外協力隊に参加するメリット・デメリット
薬剤師が青年海外協力隊として活動する際の注意点2つ
薬剤師が青年海外協力隊に参加するまでの流れ

まとめ

1.青年海外協力隊とは？

青年海外協力隊とは、独立行政法人国際協力機構（JICA）が実施するボランティア事業です。JICAは日本の政府開発援助（ODA）を一元的に行う実施機関で、発展途上国への国際協力を行っています。

JICAは発展途上国からの要請に基づき、要請に見合った技術や知識を持つ人を募集し、選考と訓練を実施して海外協力隊として人材を派遣します。派遣期間は原則2年間であることや、自分の専門分野を生かせることが青年海外協力隊の特徴です。主に下記の分野で募集が出されています。

計画・行政
農林水産
鉱工業
人的資源
保健・医療
社会福祉
商業・観光
公共・公益事業
エネルギー

出典：JICA海外協力隊「JICAボランティア事業の概要」

1-1.青年海外協力隊の薬剤師募集の詳細

青年海外協力隊における薬剤師の募集案件について、案件の例を紹介します。
（募集内容は過去のものであり、現在募集されている案件ではありません）

募集を実施している国	東ティモール
年齢制限	20〜45歳
活動内容	現地医療機関の医師などと連携して必要な医薬品を調査し、効率よく入手できる院内体系を整えられるよう働きかけます。また、患者への適切な服薬指導ができるよう、サービス体系を整えるように提案することも求められます。そのほかの活動は、現地医療スタッフの調剤能力向上のサポートや在庫管理などです。
応募条件	薬剤師の資格を持ち、実務経験は2～3年以上を条件とする募集が見られます。中には5年以上の実務経験、1年以上の病棟業務経験が必要な案件もあります。

出典：JICA海外協力隊「要望調査票｜【一般案件】」

2.薬剤師が青年海外協力隊に参加するメリット・デメリット

薬剤師が青年海外協力隊に参加することには、メリットとデメリットの両面があります。青年海外協力隊として活動する場合は、日本から2年間離れることになるため、後悔のない選択ができるようメリット・デメリットを把握することが重要です。

ここでは、薬剤師が青年海外協力隊に参加するメリット・デメリットを紹介します。

2-1.メリット1：新しい価値観に触れられる

青年海外協力隊として赴く場所は発展途上国であるため、電気やガス、水道、インターネットなどのインフラ整備が整っていない場合があります。日本の生活に慣れているとカルチャーショックを受ける可能性がありますが、その経験が「便利であること＝豊か」という考え方を見直すきっかけになるでしょう。

不便な生活を体験したことによって、公共交通機関の正確性や治安のよさなど、日本のよいところを改めて実感できることもメリットです。

2-2.メリット2：語学力が高まる

青年海外協力隊として活動する際は、現地の公用語や英語力など、語学力を求められる案件が多くあります。必要とされる語学力は派遣先によって異なるものの、日常会話程度で十分な配属先もあれば、英語で議論などができるレベルを求められることもあるでしょう。

実際に海外で活動をする際、はじめはうまくコミュニケーションが取れないケースもありますが、次第に語学力が高まることが期待できます。より厳しい環境に身を置いて語学力を高めたい人にとって、大きなメリットと言えます。

2-3.メリット3：人脈が広がる

青年海外協力隊にはさまざまな職種、バックグラウンドの人が集まります。派遣前訓練では、同じタイミングで派遣される青年海外協力隊員が2か月ほど合宿所でともに過ごすため、人脈を広げることが可能です。

また、派遣された国で現地の人と触れ合うことで、海外にも人脈を広げられます。新たに現地で起業したいと考えている人には、大きなチャンスとなるでしょう。

2-4.デメリット1：治安・健康面でのリスクがある

発展途上国での生活では、犯罪に巻き込まれる可能性が日本よりも高まるなど、身の危険を感じる機会が多くなることが予想されます。現地で注意すべきことや守るべきルールはJICAから伝えられるため、注意事項を守るように徹底してください。

健康面では、マラリアや狂犬病など発展途上国ならではの病気のリスクがあります。派遣先は医療設備が十分に整っていないこともあり、適切な治療ができず「日本であれば助かった」という事態に陥る可能性も考えておかなければなりません。

2-5.デメリット2：帰国後の就職に有利になるとは限らない

青年海外協力隊でのボランティア経験について、好意的に捉える企業がある一方、教育や国際開発などの分野以外ではあまり評価されず、帰国後の就職でつまずく人もいます。国際協力の分野で活躍したいと考えている場合は、青年海外協力隊でのキャリアは大いに評価されるでしょう。

しかし、薬剤師として再び日本で就職をしたい場合、青年海外協力隊の経験が有利にならないケースがあることを考慮する必要があります。

3.薬剤師が青年海外協力隊として活動する際の注意点2つ

薬剤師が青年海外協力隊として活動する際の注意点は、以下の2つです。

事前に語学力を高める
青年海外協力隊として活動すると、活動しながら語学力を伸ばせる可能性があります。しかし、事前に語学を勉強しておけば、現地の人とすぐにコミュニケーションを取れるなど、さまざまな活動のアドバンテージになるでしょう。
他人を尊重する姿勢を大切にする
海外で働くと、日本にいるときと比べてさまざまなギャップを感じることも増えるでしょう。他人を尊重する姿勢や丁寧に人の話を聞くコミュニケーション力は、現地で活動する際に大切な要素です。

医療の目的を「患者がよりよく生きられるように支えること」とすると、薬剤師は価値観やライフスタイルの異なる現地の人々を尊重し、寄り添う気持ちが必要です。日頃から柔軟性を持って人に接すれば、困難な状況でも乗り越えやすくなります。

4.薬剤師が青年海外協力隊に参加するまでの流れ

薬剤師が青年海外協力隊に参加するまでの流れは、以下の通りです。

なお、応募から派遣までの流れは年度により変更される場合があります。また、コロナ禍の影響により募集がない可能性もあるため、詳細はJICAのサイトを確認してください。

1	応募書類の提出
基本情報や志望動機などをマイページに登録する「ウェブ入力」とあわせて、問診票・健康診断書を郵送します。

2	一次選考
書類で健康審査と語学力審査が実施されます。語学力審査はさまざまな語学試験のスコアを提出する形式です。

3	二次選考
人物・技術面接と健康審査を受けます。形式はウェブ面接です。

4	合否判定
一次選考と二次選考の結果を総合的に判断し、合否が決定されます。

5	派遣前訓練まで
派遣前訓練までに、下記の講座や検査を受けます。語学及び講座事前学習資格取得（対象者のみ）派遣前健康診断及び感染症検査

派遣前訓練まで

派遣前訓練までに、下記の講座や検査を受けます。

語学及び講座事前学習
資格取得（対象者のみ）
派遣前健康診断及び感染症検査

6	グローカルプログラム（希望者のみ）
帰国後に国内の地域課題解決に取り組みたい人には、自治体の地域活性化の取り組みにOJTとして参加する機会が提供されます。

7	派遣前訓練
全員参加の合宿制の訓練で、JICA 二本松（福島県）、JICA 駒ヶ根（長野県）のどちらかで行われます。期間は45〜70日程度です。

8	課題別派遣前訓練
出発までの間に、技術・技能や教授法などについて支援が必要な場合に職種に応じて行われる訓練です。一つひとつは1〜3日程度で、複数の課題別訓練が課される場合もあります。

出典：JICA海外協力隊「募集要項・応募方法【一般案件】」

出典：JICA海外協力隊「応募から選考までのスケジュール【一般案件】」

出典：JICA海外協力隊「合格から派遣までのスケジュール【一般案件】」