薬剤師の転職お役立ちコラム COLUMN

2021/07/15

薬剤師は海外でも働ける?求められる要素・給料相場・働くメリットも

さまざまな企業や団体がグローバル展開している現代は、医療業界においても海外で活躍する方が少なくありません。医師や歯科医師に限らず、その他の医療従事者も世界各地で専門的な業務を行っています。

薬剤師として働く方の中にも、「視野を広げたい」「日本では経験できない仕事をしたい」と、海外で活躍することを検討している方は多いのではないでしょうか。当記事では、海外で働きたい薬剤師が仕事を見つける方法や受けるべき試験、必要な資格について紹介します。

1.薬剤師が海外で働く場合に求められる要素

薬剤師が海外で働く場合は、医薬品に関する知識以外も必要です。現地で求められる主な要素として、以下の3つがあげられます。

〇ビジネスレベルの語学力

現地で問題なく業務にあたるためには、旅行や日常会話レベルの語学力では不十分です。同僚や上司との会話に加え、職場によっては患者や医師から質問を受けることもあるため、高いレベルで現地の言葉を理解し、使用できなくてはなりません。

専門用語を含めたビジネスレベルの語学力が求められ、現地における資格取得時もその地域のOSCE(客観的臨床能力試験)で能力がこまかく確認されます。世界共通言語である英語に限らず、現地の言葉に精通していることが重要です。

〇就労ビザ

日本人が海外で働くためには、就労ビザの取得が必須です。就労に限らず留学や旅行など目的に応じたビザを申請しなくてはなりませんが、必ずしも取得できるとは限りません。また、国によって取得の難易度や申請から許可を得るまでの期間が異なるため、事前に現地のビザ事情を調べておきましょう。

〇現地の薬剤師免許

薬剤師が日本で取得した国家資格は、あくまで日本国内で従事することを許可するものに過ぎません。多くの国では、現地の薬剤師免許を取得する必要があります。

日本では認可されていない医薬品を取り扱うこともあるため、難易度は高くなる傾向です。現地の薬剤師免許を取得するために、改めて特定の教育施設へ通う必要があるかどうかも、国によって異なります。

2.薬剤師が海外で働くための方法4つ

前述のとおり、薬剤師が海外で働く場合、ほとんどの国で日本の薬剤師資格のみでは通用しません。たとえば家族の転勤をきっかけに海外での就労を検討している方は、就労ビザを取得しただけでは、現地の薬剤師として働けないと考えておきましょう。

海外で薬剤師として働くためには、国から求められる要件を満たす必要があります。現地で認められるための具体的な方法は、以下の4通りです。

2-1.現地の薬学系大学を卒業する

1つ目の方法が、現地の薬学系大学を卒業して受験資格を得たうえで、資格取得を目指すことです。必要とされる年数やカリキュラムなど、受験資格を得る条件は国ごとに異なります。以下は、海外における受験資格の取得条件の一例です。

  • 4年でカリキュラムを組む国もある(日本では6年)
  • インターンシップなどの臨床研修を必須とする場合もある
  • 臨床研修が大学のカリキュラムに含まれている国もある
  • 外国人薬剤師に単位免除の優遇措置を設ける大学もある

効率的に薬剤師資格を取得するためには、国ごとの違いのみではなく、大学ごとの条件や優遇措置の有無を確認することが重要です。

2-2.現地の薬学系大学院に編入する

2つ目は、前述で紹介した「外国人薬剤師に単位免除の優遇措置を設ける大学」の制度を活用して、現地の薬学系大学院へ編入する方法です。国によっては大学院ではなく、大学の2年次や3年次へ編入となります。

編入を利用するときの注意点は、基本的に自国民の受験を想定した試験とは内容が異なる、編入者向けの試験が作成されることです。薬剤師としての素質(知識や臨床研修の結果など)に加えて、語学力も試されます。面接などで判断される場合もあれば、国が指定する語学試験で一定の点数を獲得することが求められる場合もあります。

2-3.トランスファーに合格する

3つ目の方法は、働きたい国のトランスファーを利用することです。トランスファーとは、現地の大学へ入学することなく、一定の条件をクリアすることで薬剤師免許の受験資格を取得できる制度です。

代表的なトランスファー制度として、アメリカのFPGEC(Foreign Pharmacy Graduate Examination Committee)があげられます。FPGECは、外国人薬剤師を受け入れるために設けられた制度です。合格者は更に語学力などを問う試験やインターンシップを経て、薬剤師国家試験(NAPLEX)を受験できるようになります。

ただし、大学入学を省略する分、トランスファー制度を利用した試験合格は容易ではない点を理解しておきましょう。

2-4.ボランティアに参加する

4つ目は、ボランティアに参加することによって海外で活躍する方法です。海外青年協力隊や国境なき医師団など、ボランティア団体に所属して医療支援を行います。よって必然的に先進国ではなく、後進国が対象となります。

ボランティア団体の求人に応募し、採用されたうえで現地へ派遣されるため、日本で取得した薬剤師資格のみで活躍できる点がメリットです。大学入学や海外の薬剤師試験を受ける必要がないため、費用や就労までの所要時間を最小限に抑えることができます。

ただし、派遣期間が決められていたり、仕事内容に制約があったりと通常の薬剤師として現地で働く場合とは条件が異なる点は理解しておかなくてはなりません。

3.海外で働く薬剤師の給料相場とは?

海外で働く薬剤師の給料は、国ごとに大きく異なります。アメリカとスイスの給料相場は高い傾向にあり、一方で北欧など一部の地域は日本と同等もしくは若干低い水準です。

以下では、給料相場が高いアメリカとスイスの例を紹介します。数値はアメリカの報酬調査サイトに記載されている情報を参考とした大まかな「目安」であり、勤務地や業務経験などで変動する可能性があるため注意してください。

〇アメリカで働く薬剤師の給料相場:約1,100万~1,200万円

アメリカの薬剤師の給料相場が高額である最大の理由は、資格取得や就労までのハードルが非常に高いためです。アメリカの場合、最初に化学や数学について詳しく学ばなくてはなりません。次に4年間かけて学士号を取得したうえで薬学課程へ入学し、更に4年間をかけて薬学博士号を取得してはじめて国家試験を受験することができます。

一般的な方法でも資格取得まで8年の期間が必要となり、州によっては任される業務の幅も広くなることから、薬剤師の給料相場は高水準です。

〇スイスで働く薬剤師の給料相場:約800万~900万円

スイスもアメリカと同様、薬剤師になるためのハードルが非常に高い国のひとつです。給料相場の高さは、国内で薬学課程のある大学が数校のみと少なく、各校が国際的にも評価の高い名門校であることから、薬剤師自体の人数が少ない事情も影響しています。

医師の処方箋を必要としない、薬局やドラッグストアで購入できるOTC医薬品が多く、薬剤師に任される業務の幅が広いという特徴もあります。

4.薬剤師が海外で働くメリット2選

薬剤師の知識を活用して海外で働くことは、容易ではありません。国ごとに異なる資格取得の条件があるため、実際に現地の職場で活躍するまでに多くの時間を要します。

しかし、海外で働くことで得られるメリットも多いため、キャリアアップを目指す方に最適です。海外で薬剤師として働く最大のメリットとして、以下の2つがあげられます。

〇語学力が上達する

語学力を本格的に身に付けたい場合、効果的な学習方法のひとつは実践することです。海外で働きながら実際に現地の言葉を使用したり聞いたりすることで、テキスト上で学ぶものとは異なる、リアルな語学力を身に付けられます。専門的な単語の活用方法や現地住民ならではの言い回しなどは、体験しなければ身に付けることは困難です。

勤務先に加えて、買い物など日常生活においても現地の言葉を使用するため、自然と海外のコミュニケーション能力も得られるでしょう。

〇幅広い医療の知見が身につく

日本では認可されていない医薬品を使用したり、現地の薬剤師にのみ許可されている業務を行ったりと、幅広い医療の知見も身に付きます。さらに、海外の医薬品や医療知識が日本に導入されることも多いため、帰国後も将来的に役立てられる貴重な経験となるでしょう。

まとめ

薬剤師が海外で活躍するためには、国ごとに定められた条件をクリアする必要があります。代表的な方法は、現地の大学に入学したり編入したりしてカリキュラムを修め、薬剤師試験に合格することです。

国によっては臨床研修など特定の経験を積んだり、語学試験で一定の結果を出したりする必要もあります。日本より長い時間を要する場合もある一方で、苦労した分、業務の幅が広がったり年収が大きく跳ね上がったりとメリットも多くあげられます。キャリアアップや年収アップを目指す方は、海外企業や研究施設、医療施設などへの転職も検討してはいかがでしょうか。

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