薬剤師の転職お役立ちコラム COLUMN
2020/06/15
公務員薬剤師の仕事内容とは?3つの働き方を解説
薬剤師の就職先と聞くと、病院などの医療機関や調剤薬局、ドラッグストアなどを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。確かに医療機関などは薬剤師の主な就職先ではありますが、薬剤師は他にもさまざまな場で活躍しています。
今回は、医薬品の専門職「薬剤師」の働き方の1つである「公務員薬剤師」について詳しく解説します。公務員薬剤師の種類・仕事内容や平均給与、公務員薬剤師として働くメリット・デメリットをしっかりと確認しましょう。
1.公務員薬剤師とは?
「公務員薬剤師」とは、国(厚生労働省)または、都道府県・市区町村といった地方自治体の公務員として勤務する薬剤師のことです。公務員薬剤師は「薬剤師」という言葉がついた職業ではありますが、調剤薬局やドラッグストアなどに勤務する一般的な薬剤師とは、仕事内容が大きく異なります。
一般的な薬剤師の場合、調剤や服薬指導、市販薬の販売などの業務がメインです。一方、日本における公務員薬剤師の多くは、販売などの業務を行いません。公務員薬剤師の仕事は多岐にわたり、主に次のような業務を行います。
- 薬事行政・研究開発の振興(医薬品の監査・企画など)
- 医薬品や食品の検査
- 薬物犯罪の取り締まりや住民への啓蒙活動 など
「公務員薬剤師」と一口に言っても、仕事内容は所属先によって大きく異なります。公務員薬剤師の道を検討する場合は、「どの職種がどのような業務を行っているか」といった点を把握することが大切です。
2.公務員薬剤師の3つの働き方
公務員薬剤師の仕事内容は、「国家公務員か地方公務員か」「どの職種・職場で働くか」によって異なります。
公務員薬剤師の働き方は、所属や仕事内容によって、「国家公務員薬剤師」「地方公務員薬剤師」「麻薬取締官」の3つに大きく分けることができます。
では、上記の公務員薬剤師はどのような仕事をしているのでしょうか。就職先や、それぞれの職種に就くための方法もあわせて確認しましょう。
2-1.国家公務員薬剤師
国家公務員薬剤師とは、厚生労働省をはじめとする国の機関に所属する薬剤師のことです。国家公務員薬剤師は、医薬品や薬剤師に関するさまざまな制度の整備や管理・監視を行っており、主に次のような仕事を担っています。
- 診療報酬や調剤報酬の改定
- 医薬品の薬価算定
- 医薬品に関する製造管理および品質管理(医薬品製造企業への監視・指導)
- 薬剤師国家試験の制度や試験問題、研修制度など、薬剤師制度全体の検討
国家公務員薬剤師になるためには、薬剤師の国家資格を取得したうえで、厚生労働省に入省するための国家公務員試験に合格しなければなりません。国家公務員試験は難易度が高く、合格率も高くないため、国家試験対策など準備をきちんと行う必要があるでしょう。
2-2.地方公務員薬剤師
地方自治体(都道府県・市区町村など)に所属する薬剤師のことを、地方公務員薬剤師と言います。地方公務員薬剤師の場合、配属先によって業務内容が大きく異なります。地方公務員薬剤師の主な勤務先と、仕事内容は次のとおりです。
主な勤務先 | 仕事内容 |
---|---|
都道府県庁・市区町村役場・地方厚生局 |
|
公立病院 (県立病院などの医療機関) |
|
保健所 |
|
衛生研究所 |
|
地方公務員薬剤師になるためには、薬剤師の資格を取得し、地方自治体が行う公務員試験に合格しなければなりません。自治体によって職員採用の試験内容も異なるため、志望する自治体の要項を必ず確認して対策するようにしてください。
2-3.麻薬取締官
麻薬取締官(麻薬捜査官)とは、厚生労働省地方厚生局麻薬取締部に勤務する薬剤師のことを指します。麻薬などの違法な薬物を取り締まることが主な仕事ですが、違法薬物使用防止の啓発運動や、麻薬や危険ドラッグなどに関する相談への対応も、重要な業務の1つです。
麻薬取締官になるためには、次の条件を満たしたうえで、地方厚生局麻薬取締部が行う採用試験を受験し、合格しなければなりません。
■麻薬取締官採用試験の受験資格(①と③、または②と③の条件を満たす)
- ① 国家公務員試験(一般職採用試験)「行政」もしくは「電気・電子・情報」の合格者
- ② 薬剤師の免許所持者や、薬剤師国家試験合格見込者(年齢制限あり)
- ③ 心身ともに健康で、麻薬取締官の業務に支障がない方
■麻薬取締官になるための流れ
麻薬取締官の職員採用試験は合格率が低く、採用人数もわずかです。競争率は非常に高く選考も厳しいため、採用情報をよく確認し、試験対策を徹底する必要があるでしょう。
3.公務員薬剤師の平均給与
厚生労働省によると、令和元年の薬剤師の平均年収は約560万円となっており、薬剤師の平均収入は他の職業と比べると高収入であるといえます。
では、公務員薬剤師の給与はどのくらいなのでしょうか。
公務員薬剤師の初任給は、「令和元年人事院勧告」によると4年制大学卒業で188,400円、6年制大学卒業で210,500円となります。これは公務員の規定に準じた給与額であるため、所属や職場が違っても同一の賃金となります。
民間病院勤務の薬剤師の初任給は25万円程度であり、ドラッグストアの薬剤師は30万円を超えることもあるため、公務員薬剤師の初任給は、民間で働く薬剤師と比べてかなり低い状況です。一方で、公務員薬剤師には「定期的にきちんと昇給する」という強みがあります。初任給は低いものの、公務員薬剤師全体の平均年収は約580万円とされており、薬剤師全体の平均年収よりも高い水準です。
出典:人事院「俸給表」
人事院「国家公務員給与等実態調査」
内閣官房「令和元年12月期の期末・勤勉手当を国家公務員に支給」
退職金制度もしっかり整備されており、生涯年収は比較的高い職種といえるでしょう。
■薬剤師に関する平均年収の比較
薬剤師全体の平均年収 | 公務員薬剤師の平均年収 |
---|---|
約560万円 | 約580万円 |
4.公務員薬剤師のメリット・デメリット
薬事行政をはじめとするさまざまな業務に携わっている公務員薬剤師ですが、公務員薬剤師として働くメリット・デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。公務員薬剤師のメリット・デメリットについて、それぞれ確認しましょう。
■メリット①収入が安定している
薬剤師は国家資格職であるため、どの職場でも比較的安定して働くことが可能な職業です。なかでも公務員薬剤師は、倒産や解雇のリスクがほとんどないというメリットがあります。
勤続年数に応じた定期昇給もあり、雇用や収入の安定性が抜群であるため、安心して働くことが可能です。
■メリット②福利厚生が充実している
公務員薬剤師は、福利厚生が充実していることも魅力的です。例えば、民間企業では原則1年間(場合によっては2年間)の育児休業も、公務員薬剤師の場合は3年間の休暇が取得できます。出産や育児といったライフスタイルの変化にも対応しやすい待遇といえるでしょう。
■デメリット①部署の異動が定期的にある
部署の異動が定期的にある可能性が高いことは、公務員薬剤師のデメリットの1つです。特に国家公務員薬剤師や地方公務員薬剤師は、さまざまな部署で多方面の業務を経験することとなります。
キャリアを積むチャンスでもありますが、勤務地が変わるたびに転勤(引っ越し)が必要であったり、職場環境が大きく変化したりする可能性もあることを覚えておきましょう。
■デメリット②初任給は低い傾向にある
前述したように公務員薬剤師の初任給は、病院薬剤師や調剤薬局・ドラッグストアに勤務する薬剤師と比べると低い傾向にあることも注意点の1つです。若い頃から高収入を得たい方にはデメリットといえるでしょう。
公務員薬剤師を目指す際には、上記のメリット・デメリットについてもしっかりと把握しておきましょう。
まとめ
国(厚生労働省)や地方自治体に所属する公務員薬剤師は、調薬や服薬指導を主業務とする一般的な薬剤師とは異なり、薬事行政をはじめとするさまざまな業務を担う職業です。
公務員薬剤師は異動が多く、初任給が低いというデメリットがありますが、安定した収入や充実した福利厚生を得られるというメリットもあります。薬剤師として就職を考えている方は、公務員薬剤師というキャリア選択も検討してみてください。
公務員薬剤師への転職を考えている方は、薬剤師専門の転職サイトや転職エージェントなどのサービスを徹底活用し、転職活動をスムーズに進めましょう。
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