新卒の薬学生を採用している企業（薬局や病院）の中には、薬学生に金銭的な援助をしていることがあります。もちろん、ボランティアのためにお金をばら撒いているわけではありません。それら企業の援助の基本的な目的は人材（薬剤師）の確保です。

したがって、援助する法人の基本的な条件は、卒業（国家試験合格）後にその会社に入職し、一定期間の勤務をすることです。ほとんどの場合、数年間の勤務が終了すれば学生時代に援助された金額の返済は免除してもらえます。

在学中に支援をうける薬学生のメリットとしては、在学中に必要な金銭の工面にいくぶんかの助けになるということです。前述の通り、金銭的事情で学業ではなくアルバイトに遷延してしまい、留年や休学、さらには退学をしてしまったら、それまでの取り組みがすべて無意味になってしまいます。

たとえ後になって復学できたとしても、過去に終了したカリキュラムをもう一度勉強しなおすひつようがあります。また、そのための支払いが生じることがあるため、時間的・金銭的なロスが生じます

もちろん、卒業までに必要な学費や生活費の総額すべてを入職予定の法人からの支援でまかなうことはできません。援助してくれる額は月に数万円程度です。ただ、在学中に必要な支出をまかなうことができます。

例えば、支援の金額分はアルバイトせずに学業に専念できます。これによってストレートで卒業・国家試験を突破できたとすればどうでしょうか。この場合、留年や国試浪人によって発生する追加の時間や費用を回避でき、支援を受けることによって時間的・金銭的な利益を得られることになります。

ただ、薬学生だからといって応募すれば、無条件で求人企業から支援を受けられるわけではありません。当然ながら、応募者に対する審査があります。それでは、審査を突破するためには何に注意しなければならないでしょうか。

まずは、支援をしてくれる求人企業の意図を理解することからはじめましょう。彼らは支援した薬学生が卒業と同時に国家試験に合格して、薬剤師として入職し、支援側（薬局や病院側）の思い通りの働き方で一定期間勤務してくれることを期待しています。

違う言い方をすれば、求人側としては学生に対する支援を「投資」ととらえて、その投資した分の成果を早く回収したいのです。そして、薬剤師として働き始めたときに、支援した額以上の働きを実現してくれそうな薬学生に支援をしてくれるのです。

そのため、審査において支援する学生を選ぶ最も重要な基準は、端的にいうと「卒業・国家試験にストレートに突破できる学力があるかどうか」です。実際に支援を受ける申請をするとき、選考の際には成績証明書の提出を求められそれを分析される場合もあります。

求人企業から支援を要望する薬学生は良好な学業成績を維持する必要があり、それを意識して日々の勉学に取り組まなければなりません。また、現状は金銭的に問題がなくても何かの事情で支援が必要になる事態が起こるかもしれませんので、良い成績を維持しておくことに越したことはありません。

上述の通り、薬学生が求人企業から「資格取得後の入職」を条件に支援を受けることができれば、その金額分はアルバイトせずに学業に専念できる時間を確保できます。支援は国家試験をストレートに突破するための環境整備の助けとなります。

ただ、薬学生にとって入職予定の企業から支援を受けることはいいことずくめではありません。支援を受ける薬学生には義務も取り決められ、その義務をクリアできない場合はペナルティも課されます。支援を応募する際には、メリットだけでなくリスク（課される義務と履行不可能な場合のペナルティ）も事前に把握すべきです。

薬学生を支援してくれる企業は、前述の通り人材（薬剤師）の確保という目的があります。支援企業に何年か勤めることによって、ようやく学生時代に支援してもらった金額の返済を免除してもらえるのです。

そして、免除されるまでの期間は、ある意味で支援企業から干渉と拘束があります。在学中に修学状況の報告を求められる程度ならともかく、入職後に薬剤師の確保が難しい遠隔地での勤務を求められることもあります。

また、企業によっては上記の他に関係団体の学習会や会議などに参加することを求めているところもあります。

つまり、薬学生にとっては返済が免除してもらえるまでは、支援側の要望どおりに在学中は勉学し、国家試験の突破、さらに卒業（薬剤師資格取得）後は就労に励む義務が生じます。

そして、支援された薬学生が卒業不能や国家試験の断念、入職拒否、途中退職などで支援企業にとって期待通りにならなかった場合はペナルティが生じます。

義務不履行によって生じるペナルティの内容は、たいていの場合で支援した金額の一括返済です。それが無理で分割返済の場合は、金利が課されることもあります。その場合、支援してもらった金額以上を返済しなければなりません。

上述したようなリスクがありながら、入職予定企業からの支援による恩恵を実現するためには、まず応募する前に各企業の支援のしくみをよく理解すべきです。その上でリスクを避けるべく、どのような行動を取らなければいけないかという心構えが必要です。

入職予定企業からの薬学生の支援においては「クリアするための義務」と「義務不履行の際のペナルティ」というリスクを抱えながら、勉学のための時間を確保していることを強く認識すべきです。

そのため支援をうけたら、まずは良好な学業成績の維持することで卒業・国家試験の突破に全力をつくしましょう。

「義務」や「拘束」といった事柄の多くは入職後に発生します。支援側の思うように一定期間在籍し、勤務しなければならないからです。ある意味、「移動や職業選択の自由を犠牲にした上で支援を受ける」と考えることができます。

薬学生が求人企業からの支援を応募する際には、金額・方法・期間といった支援内容の確認だけでは不十分です。返済を免除してもらうために必要な勤務期間や働き方など、「義務」や「拘束」に関係する条件を注意深く確認しましょう。

ただ逆にいえば、薬学生が入職予定企業から支援を受けることのリスクを納得した上で順調に指定期間を勤務できれば、薬学生と支援側双方にとって幸せななことだといえます。

その状況を実現するためにも、薬学生は支援に伴うリスクについて事前に把握し、それを回避すべく行動計画をたてて実行しなければなりません。

そして、具体的にどの企業が薬学生向けにどのような支援を実施しているかを見つける必要があります。弊社ファーネットキャリアには支援実施企業の情報が蓄積しており、希望の薬学生には相談を受け情報提供をしております。

そこで、複数の支援企業の内容を比較して、 どの条件が良いか慎重に見極めて最適な応募先をみつけるようにしましょう。

学生だからといって、すべて自分の力だけで行ってはいけません。薬学生であるなら、こうした支援制度があることを理解したうえで、積極的に薬局や病院から支援を受けながら薬剤師国家試験に受かることを考えるといいです。

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