ただ、中高年や高齢者であっても、薬剤師であれば他の職種や業種に比較すると売り手市場といえます。高齢化が進む中で医療系の国家資格保持者が優遇されているのです。

薬剤師が勤務している業界としては、病院、調剤薬局、ドラッグストア、医薬メーカーが主に挙げられます。しかし、特に50代60代の転職先としては調剤薬局が主な受け皿になります。

病院やメーカーは定年制度が厳格に適用されているからです。嘱託という形で定年後も働ける場合もありますが、その該当者の多くは定年前から勤務している方です。転職組ではありません。

また、大手の調剤薬局チェーンやドラッグストアチェーンも同様に定年制が適用されております。

一方、中規模・小規模の調剤薬局は定年制度があっても、高齢薬剤師の雇用の機会があります。こうした企業では、経営者や現場の裁量で定年に関係なく転職組の雇用を判断します。

ただ、求職者側（高齢での転職・復職を希望する薬剤師側）が勤務時間を週30時間いったように、短時間勤務を望むことが多いです。子息の独立や家のローンといった経済負担が軽くなっている方が多い世代であり、体力的にも青年期に比べて衰えていることが理由として挙げられるからです。

その結果、特に60代の薬剤師は正社員に比べて短時間のパートや契約社員として雇用される傾向があります。

ただし、65歳定年制の導入の広がりや健康寿命の延びから、60代になっても正社員と同じ勤務体系で雇用される方が増えることも考えられます。

中高年の薬剤師さんにとって調剤薬局が雇用の受け皿になることから、特に医薬メーカーといった異業種の方は、転職先候補の調剤薬局の特徴を把握すべきでしょう。特徴とは、取り扱い科目や枚数といった要素です。

科目によって処理の難易度があります。例えば、小児科は処方毎に薬剤の分量を細かく量らなければならず、処理が複雑で高齢の方には不向きであるといわれています。

逆に眼科や整形科の処方は目薬や錠剤といった薬が多く、初心者でも取り扱いやすいといわれてます。将来的に処理の複雑な科目を調剤したいと考えていたとしても、いきなり小児科に挑戦するのではなく、段階を踏んで徐々にスキルアップすることを見据えましょう。

また、仮に調剤経験があったとしても、若いころに比べると体力的な衰えは逃れようもありません。したがって、勤務先の体への負担に関係する要素（処方科目、枚数、残業時間など）といったことは、転職先を決定する前にきっちりと把握しましょう。

次に、これまでも「紙の薬歴から電子薬歴（パソコン上の薬歴）へと移行していった」のと同じように、新しいテクノロジーへ対応する必要があります。

残念ながら、教育過程で早くからパソコンなどを通して慣れ親しんできた若い世代に比べるとその対応力は劣るのが通例でしょう。ただし、多くの若い世代は「高齢者が新しいテクノロジーを用いた処理への適用に時間がかかる」ことを理解しています。そして、それを前提に手助けをする光景が増えています。

そういう意味では、特に調剤薬局という空間的に閉ざされた職場では、同僚の方がいかに協力的であるかの人間関係も転職先を決めるときに見極めることが大事です。

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